Infineon、ドイツに300mmウエハー新工場を建設開始へ:ドイツ政府が早期の建設開始を承認
Infineon Technologiesは2023年2月16日(ドイツ時間)、2022年11月に計画を発表したドイツ・ドレスデンの300mmウエハー新工場の建設を開始すると発表した。2026年秋に稼働開始予定で、フル稼働時には年間で50億ユーロ程度の売上高を見込む。
Infineon Technologies(以下、Infineon)は2023年2月16日(ドイツ時間)、2022年11月に計画を発表したドイツ・ドレスデンの300mmウエハー新工場について、建設を開始すると発表した。50億ユーロ(約7200億円)を投じる計画で、2026年秋に稼働開始予定。フル稼働時には年間で50億ユーロ程度の売上高を見込んでいる。
Infineonは、10億ユーロの補助金を期待
Infineonは2022年11月14日、同社の単独投資として最大規模の50億ユーロを投じ、ドイツ・ドレスデンに300mmウエハー新工場を建設する計画を発表した。同社は発表時の説明で、「この投資決定には、十分な公的資金が必要だ。European Chips Act(欧州半導体法)を通じて十分な資金調達ができることを期待している」と述べ、成立に向けたプロセスが進む欧州半導体法を通じた補助金交付が投資決定の前提としていた。
同社は今回、「ドイツ連邦経済・気候変動対策省(BMWK)は、早期のプロジェクト開始を承認した」と説明。これによって、Infineonが要請する補助金に関する欧州委員会(EC)による検査が完了する前に、建設を開始できることになった。今後、ECによる国家補助決定と国内助成手続きを経て、欧州半導体法の目的に沿った公的資金の補助が実施されることになる。
なお、Infinieonは約10億ユーロの補助金を求めているという。同社は、「当社の投資は、ECが宣言した、『2030年までにEU内での半導体の世界生産シェアを20%にする』という目標の達成に不可欠なものだ。ドレスデン工場が提供する産業用および自動車用半導体ソリューションは、今後、欧州の主要産業におけるバリューチェーンの確保に一層貢献するだろう」などと述べている。
アナログ/ミックスドシグナルとパワー半導体を製造
新工場では、アナログ/ミックスドシグナルおよびパワー半導体を製造する予定だ。
アナログ/ミックスドシグナル部品は、エネルギー効率の高い充電システム、自動車の小型モーター制御ユニット、データセンター、IoT(モノのインターネット)向けアプリケーションなどの電源システムで使用される。同社は、「パワー半導体とアナログ/ミックスドシグナル部品の組み合わせにより、特にエネルギー効率の高い、インテリジェントなシステムソリューションを実現できる」などと説明している。
InfineonのCEO(最高経営責任者)、Jochen Hanebeck氏は、「われわれは、脱炭素化とデジタル化というメガトレンドがもたらす成長機会に向け、生産能力拡大を加速させている。再生可能エネルギー、データセンター、エレクトロモビリティなど、半導体の需要は構造的に増加している。ドレスデンに300mmウエハーの”スマートパワーファブ”を建設することで、半導体ソリューションに対する高まる需要に確実に対応する準備が整うだろう」と述べている。
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