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国家安全保障に関する規則を適用、米商務省CHIPS法の補助を受ける企業に対し(1/2 ページ)

米商務省(DoC)は、CHIPS法(CHIPS and Science Act)の補助金520億米ドルの大部分を獲得することを目指す企業に対し、国家安全保障に関する規則を適用することに注力する。

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米国の国旗

 米商務省(DoC)は、CHIPS法(CHIPS and Science Act)の補助金520億米ドルの大部分を獲得することを目指す企業に対し、国家安全保障に関する規則を適用することに注力する。アナリストが米国EE Timesに語ったところによると、米国の期待値はかなり高く設定されているようだ。

 商務省は、米国における世界最先端の半導体製造を促進するための390億米ドルの補助金に関して、半導体メーカーからの申請を2023年3月末まで受け付ける予定だという。ただし、最初の資金がいつ頃提供されるのかについては、まだ日程が決まっていない。

 米国商務長官のGina Raimondo氏は、2023年2月27日にオンラインで行われたプレスカンファレンスにおいて、「この取り組みは基本的に、国家安全保障イニシアチブである。われわれの目標は、最先端チップを製造可能な全てのメーカーが米国で生産を手掛けられるよう、米国を、量産や重要な研究開発を大規模に行うことが可能な世界唯一の国にすることだ」と述べている。

 経営コンサル会社McKinseyの半導体部門で、ドイツ ミュンヘンを拠点に活動するグローバル共同リーダーであるOndrej Burkacky氏は、EE Timesの独占インタビューに応じ、「米国は、半導体生産を国内に回帰させるための取り組みにおいてEUをリードしており、米国とEU間で衝突が起こる可能性がある」と述べる。

 「米国では資金提供を求める申請が開始されるが、EUはまだそのレベルに達していない。われわれは、検討を進めている個々のケース間のバランスを一定に保てるよう、慎重に対応しなければならない。もし補助金の多くが最先端技術に投入され、自動車や工業などの分野で必要とされる成熟ノード技術が無視されることになれば、問題が発生するだろう」(Burkacky氏)

 商務省によると、個々の補助金の金額はかなり大きく、獲得できる企業の数は少なくなる見込みだという。数十億米ドル規模の補助金を獲得する可能性が最も高い企業としては、米国に本社を置くIntelとMicron Technologyの他、Samsung ElectronicsやTSMCなどが挙げられる。いずれの企業も、米国内に新しい製造施設を建設している。

 このうちTSMCとSamsungは、最先端プロセス技術の分野でIntelの数年先を行っている。

 米国の市場調査会社であるTECHnalysis Researchのプレジデントを務めるBob O'Donnell氏は、EE Timesの独占インタビューに応じ、「これらの最有力候補企業は、それぞれ課題に直面している」と述べる。

 「特にIntelは、かなり後れを取っている状況だ。同社は既に、TSMCに追い付くべくロードマップを発表しているが、現実的に達成できるようになるにはまだ数年を要するだろう」(O'Donnell氏)

中国での生産能力拡大が制限される可能性

 だがTSMCとSamsungにとって、CHIPS法の補助金を受け取る上で直面する障壁の一つになっているのが、両社とも中国国内に半導体工場を保有しているという事実である。

 Raimondo氏は、「CHIPS法の補助金を受領する企業は、受け取ってから10年の間、懸念される外国において、自社の半導体生産能力を拡充することが制限されるという契約を締結しなければならない」と述べる。

 米国は、中国を「戦略的敵国」と呼び、2022年には輸出規制を強化した他、米国の国家安全保障に対する脅威とみなした多くの中国メーカーを、ブラックリストに掲載している。

 Raimondo氏は、「CHIPS法の補助金を受け取る企業は、米国の輸出規制に従わなければならない。もし規制に違反した場合は、補助金を取り消すという強力な仕組みを用意している。間もなく発表予定の非常に詳細な規制措置により、メーカー各社に対し、越えてはならない一線や期待される内容について、より明確に示すことができる」と述べている。

 商務省は、補助金を少しずつ拠出して、さらなる資金をプロジェクトマイルストーンに結び付けることにより、成果を構築していくとみられる。

 商務省は、「CHIPS法の補助金を受領した企業が、それを株式買い戻しに使うことは不可能だ」という。Raimondo氏は、「繰り返しになるが、補助金は、米国の国家安全保障に対する投資であり、企業が自社の利益を増やすためのものではない」と強調した。

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