半導体産業の道を切り開いた、Moore氏追悼:インタビュー再掲(2/3 ページ)
「ムーアの法則」を提唱したGordon Moore氏が2023年3月24日に逝去した。米国EE Timesが2005年に行ったインタビューの記事を再掲する。
Intelの変化
――企業のマネジャー層というのは、やはり技術的なバックグラウンドが必要でしょうか?
Moore氏 それは非常に大きな利点になるだろう。企業を経営する際に、直感的な感覚を持つことができる。Intelは現在、興味深い転換期を迎えている。これまでの4人のリーダー(編集注:歴代CEO。Bob Noyce氏、Gordon Moore氏、Andy Grove氏、Craig Barrett氏)は全員が、科学者かエンジニアだった。(5代目CEOの)Paul Otellini氏はMBAを取得しているが、テクノロジーに長く携わってきたため、現段階では私よりもテクノロジーについて知っている。とはいえ、Intelにとっては、ちょっとした変化だろう。
――Intelが目指す方向性をどう思われますか?
Moore氏 プラットフォームに沿った今回の再編は、正しいことではないか。Intelは、プロセッサ以外の付加価値を高めることが多くなっている。プラットフォームに焦点を当てるには、その責任が誰かが背負うしかない。
――DRAMとマイクロプロセッサの市場規模が、30年後にこれほど大きくなると思っていましたか?
Moore氏 Intelを立ち上げたとき、われわれは複雑なチップを作り、それを大量に使用できる方法を見つけるというビジョンを持っていた。Texas Instruments(TI)やFairchildに振り回されない規模の企業になるには、5年後に2500万米ドル規模の売上高を達成しなければならないと考えていた。実際には5年で6300万米ドルを達成したので、スタートとしてはかなり順調だったと思う。
メモリについては、私が“ゴルディロックス戦略”と呼んでいるものがあった。高速バイポーラメモリの製品も持っていたが、これは簡単すぎて、TIなどが標準TTLで手掛けていたことに非常に似ていた。MOSメモリビットとバイポーラドライバーを使ったマルチチップアセンブリも試してみたが、こちらはかなり難しく、断念せざるを得なかった。シリコンゲートメモリが適していることに気づいたのだ。老舗の大手半導体メーカーはなかなかそこにたどり着けなかった。7年間、シリコンゲートメモリを手掛けていたのは、われわれだけだったのだ。これは本当に幸運だった。もし、より難解な技術であれば諦めていたかもしれないし、より簡単な技術であれば、競合他社に先を越されていたかもしれない。
メモリは長い間、われわれの主力製品だった。マイクロプロセッサは、その次のクラスの製品として生まれたものだ。マイクロプロセッサには大きな期待を寄せていたが、開発には多くの人が思っていた以上に時間がかかった。何年も前から、マイクロプロセッサそのものよりも開発システムの方が売り上げが大きかった。その後、PCが登場し、その波に乗ることができた。
Intelの課題
――今後のIntelにとって最大の課題は何だと思われますか。
Moore氏 どの程度先まで見据えるかにもよるが、20年先を見据えた場合、中国との競合が最大の課題になるのではないか。10年先を見据えた場合は、今ビジネスを展開している分野で成長を続けるか、それとも新しいビジネスを見つけるかが課題になるだろう。だがIntelのような巨大なビジネスに大きな影響を与えることができる新しい成長分野を見つけることは難しい。
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