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AIチップ/RISC-Vプロセッサの新興企業、日本に本格進出CEOはJim Keller氏(1/2 ページ)

著名なハードウェアエンジニアであるJim Keller氏が率いるスタートアップTenstorrentが、本格的に日本に進出した。まずは自動車分野をターゲットに、AIアクセラレーターや、RISC-VプロセッサのIPを提供する。

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 AI(人工知能)アクセラレーターやRISC-Vプロセッサを手掛ける注目のスタートアップが、本格的に日本進出を果たした。2016年に設立されたTenstorrent(テンストレント)だ。カナダに本拠地を構えるが、活動のメインはほぼ米国である。シリーズCで2億3000万米ドルを調達し、従業員は約260人。CEO(最高経営責任者)は、AMDやApple、Intelなどでプロセッサの開発を手掛けてきた著名なハードウェアエンジニア、Jim Keller氏が務めている。

2021年1月にTenstorrentの社長兼CTO(最高技術責任者)兼取締役に就任したJim Keller氏
2021年1月にTenstorrentの社長兼CTO(最高技術責任者)兼取締役に就任したJim Keller氏。非常に著名なハードウェアエンジニアだ[クリックで拡大] 出所:Tenstorrent

 Tenstorrentは、プロセッサやアクセラレーターの設計会社で、AIアクセラレーターをチップ単体あるいはPCIeカードやサーバなどのシステムとして販売する他、RISC-Vプロセッサの設計IP(Intellectual Property)や、AIアクセラレーター/RISC-Vプロセッサを組み合わせたチップレットの設計IPを提供する。

Tenstorrentが手掛ける技術
Tenstorrentが手掛ける技術[クリックで拡大] 出所:Tenstorrent
テンストレントジャパン 社長 中野守氏
テンストレントジャパン 社長 中野守氏 出所:テンストレントジャパン

 2023年1月には、日本法人としてテンストレントジャパンが設立され、Graphcoreの日本法人でプレジデントを務めていた中野守氏が、代表取締役社長に就任した。

 中野氏は「日本を第2の市場開拓の場所として位置付けている。今後は日本以外のアジアや欧州にも拠点を設立していく計画だ」と語る。「現在、RISC-Vへの注目が高まっている。組み込み分野だけでなくエンタープライズにもRISC-Vの市場が拡張しつつある中、日本でも当社のRISC-VプロセッサIPを提供していく」(同氏)。特に自動車をターゲットの一つとしていて、ADAS(先進運転支援システム)や車載インフォテインメント、ECU(電子制御ユニット)に向けて製品の展開を狙う。

小規模から大規模AIモデルまで、同一アーキテクチャで対応

 TenstorrentのAIアクセラレーターのアーキテクチャは、「Tensix Core」が基本となる。メモリと演算用エンジン、通信用ネットワークエンジンおよび、それらを制御する小規模な5つのRISC-Vコアで構成されている。現在、このTensix Coreベースのプロセッサ「Grayskull」と「Wormhole」が製品として市場に投入されている。

Tenstorrentのアーキテクチャ。Grayskullの詳細 左=Tenstorrentのアーキテクチャ。「Tensix Core」を120個搭載したプロセッサが「Grayskull」である。Tensix Coreは、NoC(Network on Chip)で接続されている/右=Grayskullの詳細。5つのRISC-Vコアが、ネットワークエンジンや演算用エンジン、メモリを制御する[クリックで拡大] 出所:Tenstorrent

 Grayskullは、主に推論の実行を目的とし、PCIeカードやワークステーションのフォームファクターで提供されている。一方、Wormholeはサーバやクラウド向けとなっている。Tenstorrentは2023年後半から2024年にかけて、さらに2つのアクセラレーターを発表する計画だ。Wormholeの拡張版のような「Black Hole」と、高性能かつ小型を特長とするチップレット「Quasar(クエーサーのように発音)」である。Black Holeは6nm世代、Quasarは4nm世代の半導体製造プロセスを適用する予定となっている。2024年には、AIアクセラレーターとCPUを組み合わせ、大規模なAIモデルにも対応できるチップレットとして「Grendel」も開発する計画だ。

Tenstorrentの製品ロードマップ
Tenstorrentの製品ロードマップ。中野氏は「オープン化に努めるのが当社の方針の一つであることから、先々のロードマップも積極的に公開している」と語る[クリックで拡大] 出所:Tenstorrent

 Tenstorrentはソフトウェアの整備も進めていて、ベアメタルプログラミングモデルの「TT Metal」もオープンにしている。

Tenstorrentのソフトウェア
Tenstorrentのソフトウェア。通常は非公開であることが多いベアメタルプログラミングモデルも公開している[クリックで拡大] 出所:Tenstorrent

 中野氏は「Tensix Coreにより、小規模のAIアクセラレーターから大規模のAIアクセラレーターまで、一つのアーキテクチャで対応できることが特長だ。例えば30Wや70Wクラスのアプリケーションから数メガワットのアプリケーションまで同じアーキクチャでサポートできる。Tensix Coreは、スパースモデリングや条件分岐などを含めたモデルを容易に処理できるので、より複雑でより大規模になるであろう将来のモデルにも対応しやすいという利点もある」と述べた。

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