次世代の車載向け伝送技術「GMSL」、市場浸透が加速:高速伝送を1本のケーブルで実現(1/2 ページ)
CASEをはじめとするクルマのメガトレンドにより、車載ネットワークでやりとりされるデータ量は増加の一途をたどっている。ADIが手掛ける「GMSL」は、データ量の増加に伴う課題を解決する高速伝送技術だ。【訂正あり】
クルマの進化で増加するデータ量
CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)に代表されるメガトレンドにより、自動車はますます進化している。Analog Devices(ADI)のAutomotive Cabin Experience Business Unitで、Serial Linksのバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるBala Mayampurath氏は、ADIが想定する「将来のクルマにおける4つのビジョン」として、没入感、パーソナライゼーション、安全性、エネルギー効率(より少ないエネルギーで、より長い距離を走る)を挙げる。
近年の自動車は、最新の音響技術や映像技術が採用され、車室内で高い没入感を味わえる車種も少なくない。さらに、運転者/同乗者のスマートフォンを車載インフォテインメントシステムと無線接続し、好みに合わせたコンテンツを車室内で楽しめたり、シートの位置が運転者に合わせて自動でセットされたりと、クルマはユーザーにとって、よりパーソナライズされた空間になりつつある。安全性やエネルギー効率についても、ADAS(先進運転支援システム)技術や充電技術の進化、OTA(Over the Air)によるソフトウェアのアップデートなどにより、常に向上している。
Mayampurath氏は、「こうしたトレンドを支えるには、さまざまな技術が必要になる。高いレベルの没入感を実現するには、高精細のディスプレイや、高性能のノイズキャンセリング機能、ジェスチャー認識や音声認識の機能が要る。クルマを、よりパーソナライズするためには、Wi-FiやBluetoothなどの無線技術が必要だろう。ADASにはカメラをはじめとするセンサーが不可欠で、エネルギー効率を上げるには、ケーブルの重量を減らし、よりシンプルなシステムアーキテクチャが重要になる」と語る。
その結果、自動車に搭載されるカメラやディスプレイ、マイク、スピーカーなどが右肩上がりに増え続け、音声/映像データを処理するDSPではさらなる性能向上が求められるようになると同氏は続ける。「2027年には、2022年に比べて3倍以上のカメラ、2.8倍以上のHDディスプレイ、2.7倍以上のマイク、2.5倍以上のDSP性能が必要になるとみられている」(同氏)
それに伴い、車載システムにおいてやりとりされるデータの量も必然的に増える。そこで重要になってくるのが、車載通信の技術だ。ADIは、車載ネットワークでの高速データ通信の実現に向け、「GMSL(Gigabit Multimedia Serial Link)」という独自の高速伝送技術を手掛けている。
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