安価でクリーンなリチウム抽出技術を手掛けるNovalith:電池の需要増で環境対策が急務(1/2 ページ)
電気自動車(EV)の普及に伴い、リチウムイオンバッテリーの需要も増加している中、電池の製造に関連する環境対策は急務になっている。オーストラリアのスタートアップNovalith Technologiesは、リチウムイオン電池製造が直面する課題解決の一端を担う技術を手掛けている。
クリーンな、リチウム分離/抽出技術
TDKの一部門であるTDK Venturesのマネージングディレクターを務めるAnil Achyuta氏によると、同社は、リチウム抽出に特化したスタートアップ企業であるオーストラリアのNovalith Technologies(以下、Novalith)に投資しているという。
Novalithの技術ソリューションは、大気中の二酸化炭素を回収して利用して、有害な副産物を発生させずに資源鉱床から高品質のリチウムを分離、抽出し、バッテリーグレードの高純度炭酸リチウム(Li2CO3)を生成する。同プロセスは、現在の業界標準よりも水の使用量が少なく、必要なインフラが小型で、費用対効果が高い。Novalithは、スポジュメンや粘土などのリチウム鉱石からリチウムを抽出して精製する特許取得済みの「LiCAL」技術を商用化している。
Achyuta氏は米国EE Timesのインタビューで、「リチウムは、あらゆるバッテリーケミストリー(NMC[ニッケル、マンガン、コバルト]、LFP[リン酸リチウム]、ソリッドステート、シリコンアノードなど)の重要な要素として必要とされ、その需要は2040年までに10倍に増加すると予想される」と語った。
アナリストによると、バッテリーグレードのリチウムの予測需要は、特に世界的な電化への流れにけん引される形で、2023年までに供給を上回り、2030年には9倍以上に増加すると予想されるという。これを受けて、リチウム生産のイノベーションへの関心は急速に高まっていて、業界は存続可能なバッテリーのサプライチェーンを維持するための取り組みを進めている。
Achyuta氏は、「しかし、業界の供給は市場のニーズを満たしていないことに変わりはない。現在の供給量はわずか年間40万トンだが、10年後には需要が400万トンにまで増加すると予想されている。Novalithは、クリーンで高速な直接リチウム抽出技術を提供することで、スポジュメンや粘土、その他の鉱石資源から年間150万トンのリチウムを抽出、精製できるようにする」と述べている。
政策も後押し
同氏は、「2022年8月に米バイデン大統領が署名したインフレ抑制法(IRA:Inflation Reduction Act)には、電気自動車(EV)メーカーが中国で抽出、加工、リサイクルされた原材料を使用することを制限する条項が記載されていて、北米や米国のFTA(自由貿易協定)パートナーに加工および製造工場建設のインセンティブを与えている。IRAは、われわれが現在依存しているサプライチェーンからの大きな変化を後押ししている。Novalithは、新しい政策の推進と業界のサプライチェーンの変化による恩恵を受けて、急務である電化に向けたクリーンで低炭素フットプリントの新しいサプライチェーンを構築するための飛躍的なソリューションを提供できると確信している」と語った。
さらに、現在の炭素集約的な生産は、現行プロセスにかかる機械費用やその他の有害な副産物の両方において、当初リチウムイオン電池が推進するように設計された環境への責任を無効にするものであることから、Novalithの新技術がさらに説得力あるものとなっている。
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