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ChatGPTは怖くない 〜使い倒してラクをせよ踊るバズワード 〜Behind the Buzzword(18)(8/11 ページ)

ある日突然登場し、またたく間に世間を席巻した生成AI「ChatGPT」。今や、ネットでその名を聞かない日はないほどです。このChatGPTとは、一体何なのか。既に数百回以上、ChatGPTを使い倒している筆者が、ChatGPTの所感をエンジニア視点で語ってみたいと思います。

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ChatGPTは誤解されている?

 では、最後に、私のChatGPTに関する所感を述べさせていただきます。

 まずは、世間のChatGPTに関する誤解ですが、今回のChatGPTのメカニズムの調査(Reinforcement Learning from Human Feedback: RLHFと、ファインチューニング)によって、以下のことがはっきりしました。

 (ある程度予想はしていましたが)ChatGPTもまた、これまでの「弱いAI」と同様に、自律思考など1mmもやっていませんでした。ですので、「AIが政治を乗っとる時代」は、残念ながらまだまだ遠いと言わざるを得ません(もちろん、驚異的な発想に基づく、AI技術の活用と連携には、腰を抜かす程度には驚きましたが)。

 そういえば、先日、某新聞のトップに『ChatGPTに国会で政府の答弁をさせることは、憲法の違反になる恐れがある』とかいう識者の意見が記載されていて、私は首をかしげていました。

 ―― どの条文に抵触するの?

 私、今、日本国憲法の条文を開いて読んでいるのですが、”当たり”を付けることすらできませんでした。そもそも、国会でのChatGPTが憲法違反になるなら、Googleサーチが駄目でしょうし、インターネットの利用すら憲法違反になります。

 ChatGPTがすごいのは、膨大な文章コーパスがあり、あたかも人間が作っていように見せるインタフェースの精錬さと、その説明内容の選択のラインアップのバランスの良さと、そして、それらをまとめて驚異的なスピードで表示する能力です。

 ChatGPTは、玉虫色の優等生的答弁をするように作られています。前述の、”真実性”、”無害性”、”有用性”の方針で学習されているからです。しかし、国会答弁は、誰を/どこを切り捨てて、どこに金と時間をかけていくか、という、生臭いドロドロした話です。例えば、少子化対策は、詰まるところ、高齢者福祉の切り捨てとトレードオフです。

 もちろんChatGPTは、Generative AI(生成型AI)なので、そういう生臭いドロドロの答弁をさせることも可能でしょうが、そんな答弁したら、ChatAPIではなく、内閣の方が先に倒れます。(個人的には、故吉田首相の『バカヤロー解散』に匹敵する、『ChatGPT解散』を見てみたい気はしますが)。

 『職が奪われる』のは考えられる未来の一つだと思います、それでも、パソコン導入時のインパクトに比べれば、はるかに小さい規模であろうと思います。パソコンの時と同じように、ChatGPTが入ってきたら、いきなり失職する、なんてことはありません。技術革新による社会変化は10年のスパンが必要です(反対勢力が、改革を押し止めるブレーキになるから)から、その間になんとかすれば良いでしょう。

 では、これからどうすればいいのか。

 ―― ラクすればいいんじゃないですか?

 ChatGPTは、多くの人が平等に使えるので、差別化技術にはなりません(意固地になってChatGPTを使わない人のことなんか、私は知りません)。とすれば何が残るか? 『便利な道具』の一択でしょう。

ChatGPTへの「世間一般の反応」に対する江端の所感

 次に、ChatGPTの世間の反応に対する、江端の見解を述べさせていただきます。

 ChatGPTによって、考える力が低下する、と言われますが、私は「そうかな?」と疑っています。

 むしろ逆に「考える力が向上する」と思います。どんな仕事でも勉強でも、最初の一歩のところが難しい、ということは多いですが、ChatGPTは、この最初の一歩の障壁を下げてくれる、思考の「踏み台」となるからです。

 例えば、私が論文を書いているとき、「XXXについての課題を出せ」とChatGPTに言うと、私の想定外の課題が山ほど出てきて、検討項目が増えました。結果として、ものすごく苦労させられましたが、学会発表で想定される質問の予想ができて、逆に安心することができました。

 あとは歴史的な経験則ですね。「パソコンによって考える力が低下する」「検索エンジンによって考える力が低下する」「スマホによって考える力が低下する」 ―― 全て、これまで散々言われてきたことですが、この中で、実際に「考える力が低下した」という事例が一つでもあったでしょうか? もしそのような事例があれば、客観的なデータを添付して私に送付してください。ちゃんと検討してお返事をします。

 ChatGPTのコピペが蔓延する? ―― そんなに悪いことですかね。

 私は、友人のレポートを書き写すくらいなら、ChatGPTの内容を書き写す方が勉強になる、と思っているくらいです。それにChatGPTは、汎用アプリケーションですから、丸写しは簡単に発見されてしまいます(即、レポート却下にできます)ので、これからはそういう行為は意味を成さなくなっていくと思います。

 むしろ、学生にとっては受難の時代の突入と言えます。ChatGPTを越える発想をしなければ、評価されない時代です。私は、ChatGPTを最初から無視して、一点突破の狂ったロジックを展開できる学生の方に、高い評価が与えられるという逆転現象すら予想できます。

 まあ、そんなにコピペが心配なら、口頭試問すれば済みます。ChatGPTの解答を見せた上で、試験官は「さて、この内容以外の観点から、自由に論じてください」と尋ねれば足ります。学生の方もその準備ができますので、Win-Winになるでしょう。

 国会の答弁に使われる? ―― 大歓迎です。

 大臣の答弁の質が上がることが期待できます。

野党議員:『大臣。そんなChatGPTで言える程度のこと、私は聞いていませんよ』。

 しかし、逆に野党も質問の内容を熟考しなければなりません。

大臣:『その程度の質問なら、ChatGPTに聞いてもらえませんでしょうか。いちいち、私に聞かなくてもChatGPTが答えてくれますよ』

 うん、こうなれば、国会中継が、随分楽しいものになりそうです。ワクワクします。

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