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投稿論文が激増した「VLSIシンポジウム2023」、シンガポール国立大が台頭湯之上隆のナノフォーカス(62)(1/6 ページ)

2023年6月に京都で開催される「VLSIシンポジウム2023」。ようやく、本格的なリアル開催が戻ってくるようだ。本稿では、デバイス分野のTechnologyおよび、回路分野のCircuitsそれぞれについて、投稿/採択論文数の分析を行う。

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京都開催の「VLSIシンポジウム2023」


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 半導体の3大国際学会の一つ、「VLSIシンポジウム」が2023年6月11日(日)〜16日(金)に、京都リーガロイヤルホテルで開催される(以下、VLSI2023と呼ぶ)。それに先立って、同年4月25日(火)10〜12時に、記者会見がリモートで行われた。

 コロナ禍の2020年と2021年は、完全バーチャルのオンライン学会になった。昨年2022年は、ハワイのリゾートホテル“Hilton Hawaiian Village”における現地開催と学会終了後のオンデマンド配信のハイブリッド学会になった。

 ことし2023年は、基本的に2022年と同じハイブリッド学会であり、京都で現地開催され、学会終了後にオンデマンド配信される。ただし、同じハイブリッドと言っても、ことしは現地開催を重視するという。つまり、昨年は「(恐る恐る)現地開催+オンライン」だったが、ことしは「(きっぱりと)現地開催+オンライン」にするということである。

 記者会見で質問したところ、オンデマンド配信の期間は昨年と同じらしい。となると、恐らく8月末まで配信されることになるだろう。また、2020年以降、ほぼ全ての発表スライドがダウンロードされるようになったが、ことしもそうなる見込みである。

 そのスライド数は、レギュラー発表が212件(内、デバイス分野のTechnologyが89件、回路分野のCircuitsが123件)に加えて、ショートコースやワークショップを合計すると、250件以上になると思われる。その発表スライドのほぼ全てが入手できるというのは、他の国際学会には無いことであり、夢のようである。しかし、情報の洪水に溺れることになるため、悪夢のようでもある。

 本稿では、VLSIの投稿論文数および採択論文の分析を行う。

 先に結論を述べると次のようになる。VLSIシンポジウムは、1980年代に日米半導体摩擦が激化した時に、日本と米国が設立し、両国が運営してきた国際学会である。しかし、その主役の座は、日米からアジア諸国などに移行しつつある。少なくとも、既に日本は主役ではい。

 また、TechnologyとCircuitsの合計の採択論文数で、National University of Singapore(シンガポール国立大学)が、欧州imecやSamsung Electronicsを押さえて1位になった。つまり、シンガポール国立大学が、半導体研究で非常に高いアクティビティーを有していることが分かった。

 さらに、2005年以降、減少し続けていた日本の投稿論文数と採択論文数は、2021〜2022年で底を打った可能性がある。2021年にTSMCが熊本に進出すると発表し、2022年に半導体の新会社Rapidusが設立されたことなどが、日本に半導体ブームをもたらし、それが論文数の増大につながったのかもしれない。

VLSI2023の投稿および採択論文数

 図1に、VLSI2023の論文の投稿数と採択数の状況を示す。投稿論文数は632件、採択論文数は212件、採択率は34%だった。ISSCC(回路)、IEDM(デバイス)および、VLSIシンポジウム(回路とデバイス)を半導体の3大国際学会と位置付けているが、どれも論文採択率が30〜40%である。今回のVLSI2023の採択率も、例年通りの狭き門となった。


図1 VLSIシンポジウム2023の投稿、採択状況[クリックで拡大] 出所:2023年4月25日に行われたVLSIシンポジウムの記者会見の資料の抜粋

 また、Technologyでは、投稿論文数が273件、採択論文数が89件、採択率が33%、論文募集締め切り後に受け付けるLate Newsは9件の投稿があったが、採択されたものは無かった。

 一方、Circuitsでは、投稿論文数が359件、採択論文数が123件、採択率が34%、Late Newsは11件の投稿があり、そのうち1件が採択された。

 以上から、投稿論文数も採択論文数も、TechnologyよりCircuitsの方が若干多いことが分かる。この傾向は、例年通りである。また、Late Newsは、合計21件の応募で、採択はわずか1件である。昨年は7件の応募で採択されたものは無かった。Late Newsは、レギュラーペーパー以上に狭き門と言える。

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