投稿論文が激増した「VLSIシンポジウム2023」、シンガポール国立大が台頭:湯之上隆のナノフォーカス(62)(4/6 ページ)
2023年6月に京都で開催される「VLSIシンポジウム2023」。ようやく、本格的なリアル開催が戻ってくるようだ。本稿では、デバイス分野のTechnologyおよび、回路分野のCircuitsそれぞれについて、投稿/採択論文数の分析を行う。
Circuitsの投稿・採択論文数、採択率
図8に、Circuitsの投稿および採択論文数の推移を示す。Technologyのところでも述べたが、Circuitsでも、偶数年のハワイ開催の投稿論文数の方が、奇数年の京都開催より多い傾向にあった。
ところが、ことし2023年の投稿論文数は、昨年2022年のハワイ開催のときより8件多い359件となっている。そして、注目すべきは、Circuitsの投稿論文数は、2014年以降、ジリ貧状態だったにもかかわらず、2021年で底を打って増大に転じたようにも見えることである。
ただし、2023年が、コロナ禍から解放されて、一時的に投稿論文数が増えただけという可能性もないとは言えない。そのことを明らかにするためには、来年2024年以降の投稿論文数の動向を観察する必要がある。
Circuitsの地域別の投稿・採択論文数
図9に、Circuitsの地域別の投稿論文数の推移を示す。2016年頃までは、米国の投稿論文数が圧倒的だった。ところが、その後、上下動しながら米国の論文数は減少していき、2021年以降に韓国が急接近してきた。また、2020年以降に、中国の論文数が急拡大している。
一方、日本は、2006〜2013年頃は、台湾と2位争いをしていたが、2013年以降は次第に減少し、2021年には最下位のシンガポールにも抜かれた。
以上の結果、2023年は、1位が米国(86件)、2位が韓国(79件)、3位が中国(73件)、4位が欧州(40件)、5位が台湾(26件)、6位が日本(23件)、7位がシンガポール(15件)の順となった。
図10に、Circuitsの地域別の採択論文数の推移を示す。2005〜2010年頃は、米国が1位、日本が2位だった。しかし、2011年以降、日本の論文数が急激に減少し、2021年にはわずか5件に低迷する。その後、やや回復に転じ、2023年は16件となり、僅差で欧州を抜いて3位に返り咲いた。
一方、1位の米国は、2015年の61件でピークアウトし、上下動しながら論文数が減少しているように見える。そして、2016年頃から急激に増大してきた韓国に肉薄されている。
以上の結果、2023年は、1位は米国(35件)、2位は成長著しい韓国(28件)、3位はやや回復した日本(16件)、4位は欧州(15件)、5位は台湾を抜いた中国(10件)、6位が台湾(9件)、7位がシンガポール(7件)となった。Technologyでは、5件の採択に甘んじた中国が、Circuitsでは10件採択されたことが、ちょっとした驚きである。ただし、それでもなお、中国の採択率は低い。
ここまでのまとめ
ここまで、VLSI全体、Technology、Circuitsについて、投稿・採択論文数を分析してきた。その結果、全体の採択論文数で、韓国が米国に接近している。Technologyの採択論文数では、韓国が米国を抜いて1位になっており、Circuitsでも韓国が2位の座に定着している。
一方、日本は、Technology、Circuits、その合計の採択論文数全てが低迷しており、VLSIシンポジウムの主役ではなくなった。
今度は、機関別の採択論文数を見てみよう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.