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投稿論文が激増した「VLSIシンポジウム2023」、シンガポール国立大が台頭湯之上隆のナノフォーカス(62)(5/6 ページ)

2023年6月に京都で開催される「VLSIシンポジウム2023」。ようやく、本格的なリアル開催が戻ってくるようだ。本稿では、デバイス分野のTechnologyおよび、回路分野のCircuitsそれぞれについて、投稿/採択論文数の分析を行う。

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機関別の採択論文数

 図11に、機関別のTechnologyの採択論文数を示す。ここ10年間、1位の座に君臨しているのは、最先端の設備をそろえ、世界中の半導体関連メーカーと共同研究を推進している、欧州のコンソーシアムimecである。この結果には、「やっぱりな」と思う。大きな驚きはない。


図11 VLSI Technologyの機関別採択論文数(2件以上)[クリックで拡大] 出所:2023年4月25日に行われたVLSIシンポジウムの記者会見の資料の抜粋

 ところが、2020年以降、採択論文数が急蔵してきたシンガポール国立大学が2023年に10件となり、3位のSamsung(8件)、4位の台湾国立大学とTSMC(5件)などを抜いて、2位に躍り出た。1位のimec(11件)まで、その差はわずか1件だ。

 この結果には、驚かざるを得ない。というのは、Technologyの分野で、高いレベルのR&Dを行うには、相当高額な設備が必要だからだ。もちろん、優秀な研究者も多数必要である。imecのようなコンソーシアム、SamsungやTSMCのような先端半導体メーカーなら、これらの要素は十分備わっている。しかし、一つの大学でこれらをそろえて、クオリティーの高い論文を量産するというのは、なかなかできることではないように思う。

 そして、Circuitsの機関別採択論文数を考慮すると、さらに驚くことになる。2022年まで、VLSIシンポジウムの記者会見では、Circuitsの機関別採択論文数は発表されなかった。ところが、2023年から、Circuitsでも機関別論文数を発表することになった(図12)。


図12 VLSI Circuitsの機関別採択論文数(3件以上)[クリックで拡大] 出所:2023年4月25日に行われたVLSIシンポジウムの記者会見の資料の抜粋

 その結果、Circuitsでは、1位が韓国のKAIST(9件)、2位がSamsung(7件)、3位がシンガポール国立大学(6件)、4位が米ミシガン大学(5件)などとなっている。1位と2位を韓国勢が占めていることにも目を引くが、筆者は3位にシンガポール国立大学が入っていることに注目した。

VLSI2023の採択論文数1位は?

 そして、VLSI2023における、TechnologyとCircuitsを合計した機関別採択論文数のランキングをグラフにしてみた(図13)。今まで、VLSIシンポジウムの記者会見で、このような合計のランキングが発表されたことはない。また、筆者も、今回初めてこの集計を行った。


図13 VLSIシンポジウム2023の機関別採択論文(3件以上)[クリックで拡大] 出所:2023年4月25日に行われたVLSIシンポジウムの記者会見の資料の抜粋

 その輝ける第1位は、シンガポール国立大学(16件)となった。2位はSamsung(15件)、3位は韓国KAIST(13件)、4位は欧州imec(11件)、5位は韓国の浦項工科大学校(7件)、6位が米Intel(6件)、7位が台湾国立大学、TSMC、ソニー、米ミシガン大学(5件)などとなっている。

 シンガポール国立大学の強みは、TechnologyでもCircuitsでも、どちらも採択論文数が多いことにある。欧州imecのように、Technologyだけに偏っていない。

 また、2位のSamsung、3位のKAIST、5位の浦項工科大学校と上位を占めている韓国勢も、TechnologyとCircuitsの二つの分野で論文が採択されている。5件以下の機関を見ると、唯一ソニーがTechnologyとCircuitsで論文が採択されているが、それ以外の機関はTechnologyかCircuitsのどちらかに採択論文が偏っている(なお、図11のTechnologyは2件以上、図12のCircuitsは3件以上の機関をランキングしているので、Technologyで1件だけ、Circuitsで2件以下の機関は、この集計から漏れている可能性がある)。

機関別採択論文数の総括と論文採択率

 初めて試みたTechnologyとCircuitsの合計の機関別採択論文数で、2023年はシンガポール国立大学が1位となった。シンガポール国立大学の競争力がどこにあるのかは、6月11日から始まるVLSI2023に参加することによって、明らかにしてみたいと思う。

 また、合計の機関別採択論文数で、韓国のSamsung、KAIST、浦項工科大学校が上位にランクされている。韓国が国を挙げて半導体のR&Dに注力していること、産学の連携が取れているであろうことがうかがえる。台湾も、TSMCと台湾国立大学が5件、国立交通大学が3件と、いずれもTechnologyの採択論文であるが、産学の連携がうまくいっているように見える。

 ここで、2018年以降について、TechnologyとCircuits、それぞれについて、地域別の論文採択率をグラフにしてみた。すると、Technologyでは、2022年と2023年に、シンガポールが採択率60%を超えている(図14)。また、Circuitsでは、上下動はしているが日本の採択率が高く、2023年には69.6%を記録している。2位がシンガポールの46.7%である(図15)。


[クリックで拡大] 出所:VLSIシンポジウムの記者会見資料等を基に筆者作成

 一方、中国は、Technologyの投稿論文数が最多(57件)だったが、採択率は8.8%となっている。また、Circuitsでは3位の73件の投稿数だったが、こちらも13.7%に低迷している。ただし、侮れないのは、2018年のTechnologyの採択率が25%であり、2019年のCircuitsの採択率は40%となっているということである。つまり、中国の論文採択率は安定していないが、ここ数年、大量に論文を投稿しているので、一皮むければ主役に躍り出る可能性もあるということだ。

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