東芝が語る、車載半導体の最新技術動向:パワー半導体は低耐圧MOSFETとSiC中心(1/3 ページ)
東芝は2023年5月、車載半導体への取り組みに関する説明会を実施した。説明会では、担当者がSiCを含むパワー半導体やモーター制御ICなど、同社の注力領域に関する技術動向を説明した。
東芝は2023年5月24日、オンラインで説明会を開催し、SiC(炭化ケイ素)を含むパワー半導体やモーター制御ICなど、車載半導体分野の注力領域に関する技術動向を説明した。
東芝の半導体事業(デバイス&ストレージソリューションセグメント)は、2022年度通期売上高が7971億円で、東芝全体の売上高(3兆3617億円)の約24%を占める主力事業だ。車載半導体分野においてはインバーターやバッテリー管理システム、モーター制御などでの省電力化/高効率化実現に向け、パワー半導体やモータードライバー、車載向けフォトカプラ、ブリッジIC、ファインセラミックスなどの開発を進めている。今回は、特にパワー半導体およびモーター制御ICについて、東芝デバイス&ストレージ 半導体応用技術センター 車載ソリューション応用技術部 シニアマネージャーの来島正一郎氏が、その技術動向などを紹介した。
シリコンMOSFETに最注力、300mm工場も拡大
同社のパワー半導体事業は、シリコンMOSFETを最注力事業とし、低耐圧MOSFETを中心に車載、産業/サーバといった高伸長市場に高性能/高品質製品を投入、さらに300mmウエハー工場の立ち上げなどの生産能力増強も進めている。同時に、新規拡大分野としてSiC(炭化ケイ素)を中心としたワイドバンドギャップ(WBG)パワー半導体も車載、サーバ/通信電源、再生エネルギー、産業機器向けとして開発を進めている。現在、SiC-MOSFETおよびショットキーバリアダイオード(SBD)は第3世代品を提供しているほか、GaN(窒化ガリウム)パワー半導体についても2024年中の提供開始を計画している。また、シリコンIGBTなどの「レガシー分野」も市場規模の大きなマーケット向けに引き続き提供していく。
車載パワー半導体はクルマの電動化/電装化を背景に市場拡大が続いている。来島氏は、中でも低耐圧MOSFETおよびSiC製品が、2030年にそれぞれ車載パワーデバイス市場の3割程度を占めるまで急拡大するという市場予測を示し、両製品への注力を強調した。また、ECU(電子制御ユニット)搭載数の増加から自動車1台当たりのMOSFET搭載数が2020年の169個から2023年には約1.6倍の267個にまで増加するとも推測していて、「自動車の電動化の技術変革を支えるデバイスとしての重要度が増大している」という。
同社の車載向け低耐圧パワーMOSFETは、40V系は現在第9世代品を、100V系は第9〜10世代品を提供中だ。同製品は低いオン抵抗/スイッチング損失を特長とし、第8世代品との比較では第9世代品はオン抵抗を15%低減(100V製品での比較)しているという。同社は、製品数(パッケージや特性仕様)を倍増すべく製品開発を強化すると同時に、300mmウエハープロセスへの展開および後工程のタイ工場展開拡大によって、生産能力も拡大していく方針だ。
また、シリコンのIGBTについては、現在インバーター向けに750V/1200V品に加え、IGBTとダイオードを一体化した第1世代品を提供中。2025年以降には300mmに量産展開した一体型の第2世代品の提供を開始する予定だ。
同社は2022年12月から加賀東芝エレクトロニクスの既存棟において、300mmウエハー対応製造ラインでの製造を開始していて、さらに300mmラインの新棟も建設中だ。2024年度中に新棟の第1期分が稼働予定で、第2期分もその後に計画。最終的には生産能力を2021年度と比べ3.5倍にまで拡大する予定という。
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