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成長の核はSiC、生産能力5倍に 三菱電機のパワー半導体SiCの売上高比率30%目指す(2/3 ページ)

三菱電機は2023年5月、オンラインで経営戦略説明会「IR Day 2023」を開催。半導体・デバイス事業本部長の竹見政義氏が、SiCパワーデバイスに関する取り組みを含めた同事業の成長戦略を語った。

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成長率43%、SiCモジュールに焦点

 SiCパワーデバイスの市場環境について、竹見氏は、「SiCパワー半導体は、汎用性の高いディスクリート製品から市場が拡大してきたが、電気自動車(EV)への搭載によって急速に市場が成長するに従い、特に製品の性能を最大限に引き出せるモジュール製品市場が高い成長率で伸びていくと期待されている」と説明。SiCモジュール市場は2021〜2027年度の間CAGR43%で成長するという市場調査会社の予測も示しつつ、SiCモジュールへの事業の集中を強調していた。

成長加速に向け、SiCモジュールに注力していく[クリックで拡大] 出所:三菱電機
成長加速に向け、SiCモジュールに注力していく[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 同社はこれまでもパワーモジュールに注力していて、パワーモジュール全体ではグローバルシェア2位、シリコンの民生用IPM(インテリジェントパワーモジュール)および電鉄用フルSiCモジュールではそれぞれシェア1位と優位性を有している。また、SiCモジュールについては、1990年代に開発に着手し、2010年10月にはルームエアコンにフルSiCのDIPIPM、2012年12月には数値制御装置(CNC)ドライブユニットにハイブリッドSiC-IPM、2015年6月には高速鉄道の主変換装置向けにフルSiCパワーモジュールをそれぞれ世界初搭載。さらに2019年2月にはxEV用の超小型パワーユニットにフルSiCパワーモジュールを搭載し、世界最高出力を達成するなど、他社に先駆けた展開を続けてきたという(いずれも発表時点での同社調べ)

パワーモジュール全体ではグローバルシェア2位、シリコンの民生用IPMでは1位、電鉄用フルSiCモジュールでも1位と、それぞれ高いシェアを有している[クリックで拡大] 出所:三菱電機
パワーモジュール全体ではグローバルシェア2位、シリコンの民生用IPMでは1位、電鉄用フルSiCモジュールでも1位と、それぞれ高いシェアを有している[クリックで拡大] 出所:三菱電機

三菱電機のSiCモジュールの強み

 同社がSiCモジュールの強みとして挙げるのは、化合物半導体技術、チップ技術、モジュール技術という要素技術および市場実績だ。

三菱電機のSiCモジュールの強み[クリックで拡大] 出所:三菱電機
三菱電機のSiCモジュールの強み[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 SiCは素材の性質上、基板に欠陥が多く存在し、高い品質や生産性の確保には高度なプロセス技術が必要となる。同社は、高周波・光デバイス事業で蓄積してきた、化合物半導体に特化したエピ/プロセス技術によって基板欠陥の無害化技術を確立している他、高い信頼性が必要とされる電鉄分野での長年のノウハウも有していて、「こうした技術/ノウハウを製品に応用することで、SiCの高い品質や生産性を実現している」(竹見氏)という。

 チップ技術では、独自の電界緩和構造を採用したトレンチ型SiC-MOSFETによって、同社の従来型(プレーナー型MOSFET)と比べ、素子抵抗率約50%を実現しいて、竹見氏は、「EV分野で求められる航続距離の延長、システムコスト削減への貢献が可能と考えている」と説明。同チップ技術については、「今後さらに改良を重ね、製品価値の継続的な向上を図っていく」としている。

 そして、モジュール技術では、最新の自動車用シリコンパワーモジュール「J1シリーズ」が同容量帯の競合他社製品と比べ約29%の小型化と約53%の軽量化を実現していることを挙げ、「SiCにおいても、こうした小型軽量モジュールを市場に投入していくことで、インバーターの小型化低コスト化に貢献していく」(竹見氏)と方針を示していた。

 市場実績については、SiCモジュールとしてはドイツのSiemens Mobility(鉄道分野)をはじめ、「高性能/高信頼性において長年にわたり多くの顧客から高く評価されている」点、自動車市場としてはシリコンも含め、累計採用実績は車両2600万台相当に及んでいる点を強調していた。

 また、竹見氏はパワーデバイス事業の強みとして、グループ内の先進基盤技術、生産技術を結集した研究開発部門との開発/技術連携や、半導体を使う立場であるさまざまなユーザー事業との連携が可能な点も挙げ、「多様なグループ内リソースとのシナジーによって、最先端のキーデバイスを市場に提供できることが、当社最大の強みだ」と述べていた。

幅広いユーザー事業の知見を取り組むなどしながら、市場競争力の高いデバイスを開発することを独自の強みとしている[クリックで拡大] 出所:三菱電機
幅広いユーザー事業の知見を取り組むなどしながら、市場競争力の高いデバイスを開発することを独自の強みとしている[クリックで拡大] 出所:三菱電機

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