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中国の「レアアース支配」打破目指す、米新興が始動テキサス州で採掘予定(1/2 ページ)

米国のスタートップであるUSA Rare Earthは、米国テキサス州において、ハイテク製品に不可欠なレアアースの採掘を計画。レアアースのサプライチェーン全体の90%を占める中国に対し、直接対決を挑んでいく構えだ。

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 米国のスタートップであるUSA Rare EarthのCEO(最高経営責任者)、Tom Schneberger氏は、米国EE Timesの取材に応じ、「われわれは、国家安全保障および電気自動車(EV)の生産などに不可欠とされる『無名の金属』の、唯一の米国サプライヤーになることを目指す」と述べている。これまでレアアースのサプライチェーン全体の90%を支配し、時にその強みを地政学的な脅しの道具として利用してきた中国に対し、同社は直接対決を挑んでいくという。

2024年までに高性能希土類磁石の供給を開始

USA Rare EarthのCEO(最高経営責任者)、Tom Schneberger氏。背景は同社が採掘を目指す鉱床だ 出所:EE Times/Alan Patterson
USA Rare EarthのCEO(最高経営責任者)、Tom Schneberger氏。背景は同社が採掘を目指す鉱床だ 出所:EE Times/Alan Patterson

 USA Rare Earthは2027年までに、5億米ドル超を投じ、採鉱や抽出、精製を強化していく予定だ。それに先立ち2024年までに、EVや各種エレクトロニクス製品に向けた高性能希土類磁石の供給を開始するという。

 Schneberger氏は、「米国での磁石の生産を段階的に拡大していくことから着手し、主に顧客として米国メーカーと商談を進めることに注力するが、欧州や韓国などの顧客企業とも接触している」と付け加えた。

 Schneberger氏の発言に対し、残された疑問点としては、「USA Rare Earthの売上高全体のうち、磁石とレアアース元素のどちらがどれくらいの割合を占めるのか」という点と、「欧州や他の地域と、米国に対する供給量は、それぞれどれくらいになるのか」といった点が挙げられる。

 同氏は、「それらは全て、今後進めていくうちに分かってくることだ」と述べる。

懸念される中国のレアアース『武器化』に備える

 レアアースメタルは、米国のエレクトロニクスサプライチェーンが持つ脆弱性の一つだ。この他にも、半導体チップやIC基板、PCB(プリント基板)などが挙げられるが、これらは全て、主にアジアから供給されている。中国は2010年、日本との間で外交問題が発生した際に、日本へのレアアース輸出を停止した。米中間の技術戦争が激化する中、レアアースが再び『武器化』されるのではないかという懸念が高まっている。

 Schneberger氏は、「こうした懸念は最近、さまざまな種類の重要な鉱物全体で見られる」と述べる。

 米国は2022年10月、中国に対し、国家安全保障上の懸念を理由に、半導体チップと関連する製造装置の輸出規制を強化した。Semiconductor AdvisorsのプレジデントであるRobert Maire氏によれば、そうした規制の度が過ぎると、中国が報復に出る可能性があるという。

 Maire氏は、「正直なところ、中国は米国にかなりの打撃を与えることが可能だ。中国は米国に対し、多くの希土類元素などを供給しており、それらは、米国に対して戦略的に利用できる。率直に言って、そうした事態がまだ起きていないということが驚きだ」と述べる。

 China Briefingが報じたところによると、中国は2021年12月、3社の国営企業を合併し、China Rare Earth Groupを設立したという。この新会社は、中国のレアアース供給量全体の約62%を占め、ジスプロシウムやテルビウムなどの重要なレアアースに対する強力な価格決定力を得ることになるという。

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