中国の「レアアース支配」打破目指す、米新興が始動:テキサス州で採掘予定(2/2 ページ)
米国のスタートップであるUSA Rare Earthは、米国テキサス州において、ハイテク製品に不可欠なレアアースの採掘を計画。レアアースのサプライチェーン全体の90%を占める中国に対し、直接対決を挑んでいく構えだ。
テキサス州でレアアース採掘へ
Schneberger氏は、30年にわたり化学業界に携わってきたベテランであり、そのキャリアの半分を製造施設の設計と立ち上げにささげてきた。同氏は、米国テキサス州エル・パソ近郊にレアアース元素を豊富に含む尾根を発見し、そこで採掘を開始する予定だという。また、かつて西部でレアアース磁石の製造に使われていた、唯一の装置を調達している。この装置は、数年間の操業後に閉鎖された工場から入手した。
同氏は、「われわれは、2024年にオクラホマ州スティルウォーター(Stillwater)の施設で、この装置を稼働させるべく、元の状態に戻す作業を進めているところだ」と述べる。
同社は、テキサス州の国有地で採掘を行う予定だ。
Schneberger氏は、「テキサス州では、さまざまなインセンティブを得られる。中国に比べ環境に優しいフットプリントを実現できる他、ニーズや雇用の創出もある。また、テキサス州だけでなく、連邦政府からも手厚い公的サポートを得られる」と述べている。
中国以外のタングステンサプライヤーの中では最大手のAlmonty IndustriesのCEO、Lewis Black氏は、「それでも、もし米国政府が、リチウムやタングステンといったレアアースの原材料の開発に着手することになれば、現在これらのレアアースを全て独占している中国は、価格破壊によって競合をつぶしにかかる可能性がある」と述べる。
米国議会は減税を支援するか
Schneberger氏は、中国のこのような動きに対抗すべく、2021年に議会で提案された法案「レアアース磁石製造税額控除法(The Rare Earth Magnet Manufacturing. Production Tax Credit Act)」の復活を期待している。この法案では、米国で作られた磁石に対して1kg当たり20米ドルを減税する他、米国で作られ、かつ米国内で生産およびリサイクルされた磁石に対して1kg当たり30米ドルを減税するという。
Schneberger氏は、「この減税法案は、中国が既に導入済み、あるいは今後導入するとみられるインセンティブや潜在的措置を相殺するために、米国で磁石を生産するインセンティブになる。また、最近策定された米国インフレ抑制法(U.S. Inflation Reduction Act)をはじめとするさまざまな政府助成金なども、資金サポートを提供してくれるだろう」と述べる。
防衛産業やEVで高い需要
Schneberger氏は、「世界の磁石売上高は、現在の約60億米ドルから、2030年にはその3倍超となる180億米ドル規模に増加する見込みだ。また、同期間における希土類酸化物の生産量は、現在の20万トンからほぼ倍増するとみられる」と述べる。
米国の防衛産業は、レアアースを強く求めている。米国議会調査局によると、米国のF-35ジェット戦闘機1機当たり約427kg、バージニア級原子力潜水艦1隻たり約4.2トンのレアアースを必要としている。
Schneberger氏は、2027年までに、USA Rare Earthは磁石市場で数パーセントのシェアを占めると予測する。同氏は、「その頃には、100万台のEVを製造するのに十分な生産量になるだろう」と述べている。テキサス州の採掘工場が年間4800トンのフル生産に達した場合、同社は新たな生産地での増産を見込んでいる。なお、同氏は、新たな生産地について具体的な場所は明らかにしなかった。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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