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枚葉式で2度目のチャンスをつかむ、Rapidus小池氏米国EE Timesが独占インタビュー(1/2 ページ)

米国EE Timesは、imecの年次イベントにてRapidus社長の小池淳義氏に単独インタビューを行った。Rapidusは、「枚葉式の処理」により超短TATで製品を顧客に提供することを狙う。これは、小池氏にとっては“2度目のチャンス”になる。さらに、Rapidusの成功をアナリストがどう見ているかも、紹介する。

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Rapidusは2度目のチャンス


Rapidus社長の小池淳義氏

 Rapidusは、日本政府およびIBMの後押しを受けて、TSMCからわずか2年遅れで世界最先端のシリコンを製造する日本国内唯一のファウンドリーを立ち上げることになる――。Rapidus社長の小池淳義氏は、米国EE Timesの単独インタビューでこのように語った。同インタビューは、imecが2023年5月16〜17日にベルギーのブリュッセルで開催した年次イベント「ITF World 2023」で行われたものだ。

 小池氏と、100人を超える同氏のチームは、“一生に一度の挑戦”に挑んでいる。

 小池氏は、20年前には軌道に乗せることができなかった日本のファウンドリー、トレセンティテクノロジーズを設立した人物だ。トレセンティテクノロジーズが失敗したのは、日立製作所(の半導体事業)とあまりにも密接に結びついていたからだと小池氏は語った。

 同氏は、2回目のチャンスであるRapidusによって、「超短TATで顧客に製品を提供できるファウンドリーの立ち上げ」の実現を目指している。

 小池氏は、「私のアイデアは、枚葉式の処理だ。つまり、ファブは在庫を一切持たないため、非常に緻密な製造を行うことでサイクルタイムを制御することができる」と述べる。

 同氏は、一度に数百枚のウエハーを処理するという標準的な慣行を覆したい考えだ。Rapidusは、数百枚のウエハーではなく1枚のウエハーからデータを抽出して、製造上の問題を迅速に解決することにより、サイクルタイムを短縮する予定だとしている。

 また同社は、現在業界で普及し始めたばかりのウエハーボンディング技術を適用した生産も増加させていくという。

 小池氏は、「1枚のウエハーを別のウエハーに貼り付けるという別の方法で製造することにより、サイクルタイムを短縮することができる。これは、ある種の新しいアイデアだ」と述べる。

 Rapidusは、2027年までに2nmチップの生産を開始できるよう、日本政府とIBMとの提携によるサポートを期待しているという。TSMCが2025年に2nmプロセスの始動を予定しているため、その後を追う形となる。

 経済産業省(METI)の当局者である野原諭氏によると、Rapidusは、次世代半導体の研究開発および量産における日本のグローバルパートナーシップを主導しているという。

 日本と米国は、半導体サプライチェーンにおける中国への依存を減らすための取り組みを進めてきた。そのパートナーシップから生まれたのが、Rapidusだ。

 野原氏は、ITF World 2023において、「次世代半導体の研究開発および量産に向けたグローバルパートナーシップへのステップは、われわれの戦略の中で最も重要な部分だ。Rapidusとimec、IBMのパートナーシップは、その最初のプロジェクトである」と述べている。

 imecは、Rapidusが2nmチップの量産に必要なビルディングブロックを開発できるようサポートを提供する予定だ。2nmチップは、5G(第5世代移動通信)や量子コンピューティング、データセンター、自動運転車、デジタルスマートシティーなどに使うことができる。

生産開始に必要な資金は370億米ドル

 小池氏は、「Rapidusが生産を開始するためには、約370億米ドルの資金投資が必要だ」と述べる。同氏も経済産業省の野原氏も、日本政府が提供する補助金の金額については明らかにしなかった。

 Foreign Policyの記事によると、TSMCが86億米ドルを投じて日本に新設した半導体工場は、経済産業省からコスト全体の40%の補助金を受ける予定だという。Reuters(ロイター通信)の報道によれば、Rapidusが経済産業省から受け取る補助金は約25億米ドルとなる見込みだ。

 小池氏は、「日本政府の資金援助は、独自の半導体法を施行している米国や欧州などの他の地域ほどは手厚くはないだろう」と述べる。「政府は半導体業界に対して、強力なサポートを提供する。しかし日本ではそれほどでもないようだ」(小池氏)

 また小池氏は、「ソニーやNTTコミュニケーションズの他、トヨタ自動車とデンソーが設立した合弁会社など、日本の大手企業がRapidusに投資する予定だ」と述べているが、その投資規模については言及を避けた。

 Rapidusは自社工場において、ヘテロジニアスインテグレーションなどのアセンブリ/テストを行う予定だ。これにより、サイクルタイムも短縮することができる。「日本には、バックエンド向けの優れた機器メーカーや材料メーカーが数多く存在する。こうしたメーカーが、われわれの取り組みに積極的に参加してくれるという」(小池氏)

 なお同氏は、「Rapidusは、ファウンドリービジネスでTSMCと直接競合するつもりはない」と付け加えた。

 「われわれは、特定の市場をターゲットに定めていきたい考えだ。注力分野としては、HPC(高性能コンピューティング)や、AI(人工知能)と組み合わせたエッジコンピューティングなどがある」(小池氏)

 小池氏は、車載用チップの話になると目を輝かせ、「自動車分野は、さまざまなチャンスの中の一つであり、エッジコンピューティングは、絶好の機会の一つになるだろう」と述べた。

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