米国の対中戦略にIntel CEOが懸念表明、規制緩和を要求:国防と企業利益の「板挟み」(1/2 ページ)
半導体において、米国の対中輸出規制は厳格化の一途をたどっている。Intel CEOのPat Gelsinger氏がこれに懸念を表明した。
IntelのCEO(最高経営責任者)であるPat Gelsinger氏は、新たな製造施設の建設に米国政府が提供する529億米ドルの大半をせがむ一方、同政府に対し、世界最大の半導体市場である中国への販売を締め付けている輸出規制を緩和するよう強く要求している。
あるアナリストが米国EE Timesに語ったところによると、Gelsinger氏がこれらの取り組みに成功しなければ、Intelにとって「大きな二重苦」になるという。また、別のアナリストは、輸出規制はIntelをはじめとする半導体メーカーに不当に照準を合わせていると主張した。
Gelsinger氏は、2023年7月に開催された「Aspen Security Forum」で、「中国はIntelの半導体輸出の25〜30%を占めている。市場が25〜30%少なくなれば、建設する工場も少なくせざるを得ない。25〜30%という数字を諦めることはできないし、世界で最も速く成長する市場から離れるのは難しい。また、研究開発(R&D)や製造サイクルへの投資を維持することも不可能だ」と述べた。
Gelsinger氏のコメントは、Intelと米国政府との(支援金をめぐる)交渉のテーブルで引用された。
Albright Stonebridge Groupでグローバル規模の技術企業のアドバイザーを務めているPaul Triolo氏は、Intelは米国政府と際どい交渉を行っていると述べた。なお、IntelはAlbright Stonebridge Groupのクライアントではない。
Triolo氏は「Intelは、製造のオンショアリングに向けて、米国での高度な製造施設の建設に膨大な金額を投資するよう求められている。同社はそれらの新たな工場から収益を得る前(つまり、米国内で収益を得る前)に、少なくとも300億米ドルを投資する計画だ。一方、米国商務省は半導体の対中輸出規制をさらに強める方針を示している。中国に半導体を輸出しているIntelでは、中国市場での収益が大幅に減少する可能性がある。Intelにとっては二重の苦しみだ」と語った。
海外の競合先よりも多くの補助金を狙うIntel
Gelsinger氏は、IntelがTSMCやSamsung Electronics(以下、Samsung)といった海外の競合先よりも多くの補助金を「CHIPS Act(CHIPS法)」から得るに値すると主張している。TSMCとSamsungも2023年の補助金の付与を申請している。
Gelsinger氏は「CHIPS法の立ち上げ以降、5つの大きなプロジェクト(工場建設)が発表された。当社のアリゾナ州とオハイオ州でのプロジェクト、TSMCはアリゾナ州、Samsungはテキサス州、そしてMicron Technologyはニューヨーク州に工場を建設することを発表している。これらに加えて複数の小規模プロジェクトもある。米国商務省長官のGina Raimondo氏とは、2023年7月24日(月曜日)に会合を持った」と述べた。
商務省は、2023年後半にCHIPS法の補助金を支給する一方で、米国の補助金をめぐって競いながら収益を中国に大きく依存しているIntelやTSMC、Samsung Electronicsの売り上げに悪影響を及ぼす輸出規制も決定するというように、アメとムチを使い分けている。
Gelsinger氏は、「SamsungやTSMCなどが米国で製造しているのであれば、それは米国にとって喜ばしいことだ。しかし、Intelが重要な研究開発を全て米国で行っているのに対し、SamsungやTSMCはそのほとんどを海外で行っている。こうした状況を考慮すれば、Intelはもっと恩恵を受ける権利があるはずだ」と主張している。
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