米国の対中戦略にIntel CEOが懸念表明、規制緩和を要求:国防と企業利益の「板挟み」(2/2 ページ)
半導体において、米国の対中輸出規制は厳格化の一途をたどっている。Intel CEOのPat Gelsinger氏がこれに懸念を表明した。
TSMCは、あくまで台湾に根ざした企業
TSMCは2023年7月28日(台湾時間)、台湾で最先端の半導体開発を行うべく、同社初となる研究開発センターを台湾・新竹に開設したと発表した。TSMCと台湾政府は、台湾を世界にとって不可欠な半導体サプライヤーにするために数十年にわたって協力してきた。一方で、IntelとSamsungは長年、プロセス技術でTSMCに追い付こうと尽力してきた。
TSMCのCEO(最高経営責任者)を務めるC.C. Wei氏は開所に伴うイベントで、台湾で「ルーツを維持する」ことを目指していると述べた。新しい研究開発センターでは、2nm技術の開発と、新材料やトランジスタ構造の研究を行うという。
Gelsinger氏は、「これはシリコンの盾(シリコンシールド)と呼ばれる台湾の戦略で、これにより、台湾を分離領土と見なす中国による攻撃の可能性を回避している」と主張している。
台湾の安全保障は米国にとって難題である。
米国商務省長官のRaimondo氏は、アメリカンエンタープライズ研究所(AEI)が2023年7月26日に開催したイベントで、「米国はアジア、主に台湾への依存によって、国家安全保障上の大きな脆弱性を抱えている」と述べている。
「絶妙なバランス」を模索する米国
IntelのCEOは、QualcommとNVIDIAのCEOとともに、ワシントンで半導体の地政学についてロビー活動を行ってきたという。
Gelsinger氏は、「7月24日にワシントンで、Raimondo氏と国務長官のAntony Blinken氏、国家安全保障担当大統領補佐官のJake Sullivan氏と会合を行った。われわれは国家安全保障の優先順位には同意するが、Sullivan氏が言うように、“高い障壁に阻まれた小さな庭”だ」と語った。
Raimondo氏は新たな輸出規制の可能性について語る一方で、「絶妙なバランス」を模索しているとも述べた。
安全保障/新興技術センターのアナリストを務めるEmily Weinstein氏はAEIのイベントで、早ければ2023年8月中に新たな輸出規制を発表する可能性が高いと述べている。
Raimondo氏は、「米国が中国に先んじている技術があり、中国はそれを明確に理解している」と語った。「高度なAI(人工知能)チップを含め、もし中国がこれらの技術を入手したら、米国に対する軍事利用が可能になるだろう」(同氏)
それでも、「米国企業が売り上げを失うような広範な制限を米国は設けるべきではない」と同氏は続けた。「われわれがやろうとしているのは狭義のものであり、これらの“チョークポイント技術”をめぐって同盟国と協力することだ」(同氏)
Gelsinger氏は、制限の詳細を厳しく指摘した。「現在、1000社以上の企業がエンティティリストに掲載されている。だが、そのうち多くの企業は国家安全保障とは無関係であり、中国の安全保障上の懸念とも無関係である」(Gelsinger氏)
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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