素材産業のGXが「日本の脱炭素実現の鍵」、経産省:「日本企業の力が試されている」
経済産業省素材産業課長の吉村一元氏は、「TECHNO-FRONTIER 2023」のセミナーに登壇し、素材産業におけるカーボンニュートラル実現のためのGX戦略について語った。
経済産業省(以下、経産省)素材産業課長の吉村一元氏は2023年7月27日、「TECHNO-FRONTIER 2023」(2023年7月26〜28日/東京ビッグサイト)で、「素材産業の更なる競争力強化に向けて〜カーボンニュートラル実現のためのGX戦略〜」と題した主催者セミナーに登壇した。
CO2排出量の多い素材産業
吉村氏によれば、世界の素材産業は順調に成長しているという。特に機能性化学品を用いる半導体市場は成長を続けていて、2030年には2020年比で約2倍となる100兆円規模に達する見込みだ。
国内製造業において、素材産業は自動車に次ぐ第2位の規模を持つ重要産業だ。事業所数や従業者数、製造品出荷額などは、国内製造業全体の2〜3割を占めている。吉村氏によると、この素材産業の二酸化炭素排出量は、製造業全体の7割を占めているのだという。
吉村氏は、素材産業におけるカーボンニュートラル実現の取り組みについて「素材産業は、原油や空気、地中に埋まっているものを加工して他産業で使えるようにするという、エネルギーを消費して当たり前の産業だ」としつつ、「とはいえ、素材産業の二酸化炭素の排出量は多く、日本のカーボンニュートラル実現には素材産業のGX(グリーントランスフォーメーション)が必要不可欠だ」と強調した。
吉村氏はさらに、「国際競争力を強化しながらカーボンニュートラルの実現に向けて取り組むため、大きな投資が必要になる」と説明。2023年2月に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」に基づき、今後10年間で150兆円超の官民投資を実現するための取り組みを進めるとした。
「成長志向型カーボンプライシング構想」
GX実現に向けた基本方針では、GX実現のための構想として「成長志向型カーボンプライシング構想」も同時に打ち出された。
成長志向型カーボンプライシング構想は、規制と先行投資支援を組み合わせることで、企業などがGXに積極的に取り組む土壌をつくり、排出削減と産業競争力強化/経済成長の両立を目指すものだ。炭素に対する賊課金を設定し、徐々に引き上げる方針をあらかじめ示すことで、企業のGX投資を促進する。また、「排出量取引制度(GX-ETS)」を段階的に導入することで、発電事業者に対して電源のカーボンニュートラル化を促す。
また、吉村氏は「自然災害や新型コロナウイルス感染症の感染拡大、地政学リスクなどの外的要因によるサプライチェーンの寸断に備えるため、生産拠点の複線化や原材料調達先の調整の必要だ」とも説明。経産省は2022年12月、半導体や蓄電池、永久磁石などを特定重要物資に指定していて、令和4年度補正予算では「経済環境変化に応じた重要物資サプライチェーン強靭化支援事業」として9582億円を確保している。
最後に同氏は「素材産業のGXは容易なことではない。だからこそ、今、日本企業の力が試されていると感じている。国としては、日本の企業がGXを推進しつつ、ビジネスを成長させられるようにしっかりと支援していく方針だ」と語った。
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