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「老後の2000万円」を準備できない私のための新アプローチ 〜検討編「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論(12)(4/7 ページ)

数年前に世間を騒がせた「老後2000万円問題」。今回は、その問題の中身を解説し、「2000万円準備できない私」のための新たなアプローチについて検討してみます。

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「健康な高齢者がブラブラしやがって」

 現在、60歳が定年年齢ですが、現在、雇用者には65歳までの雇用義務が発生しています ―― ところが、今や、多くの65歳は、十分に働けるだけの健康と体力を保持しています。これは、今後の年金受給年齢を引き上げ続ける要因となっていくだろうと思います。

 また、現在の深刻な労働者不足は、高齢者を働かせ続けるトレンドに向いていくと思います。少なくとも、私の属する技術の分野は、その傾向が顕著です。なぜか? 現在社会を支えているシステムは、全部、私たちが作ってきましたが、システムそのものは、老化しないからです(リプレース需要はあるのですが)。

 社会インフラ ―― 鉄道、電気、水、ガス、交通システムの基本的な機能は、驚くほど変わっていません

 これらの社会インフラのシステムリプレースに際して、「20年前と全く同じシステムを持ってこい」といわれることがありますが、20年前の制御コンピュータや通信ケーブルなんぞ、地球上のどこにもありません。

 新しいコンピュータにシステムをダウングレードするだけなら簡単だろう? と考えた人は、はっきり言って素人です。CPUの制御命令の順番がほんの少し変化するだけで、挙動を替えるシステムなんぞ、世の中にはゴロゴロしています。この流れでいけば、「20年前と全く同じエンジニアを連れてこい」と言われるのは、ほぼ確実です。

 ちょっと話がズレてきました。元に戻します。

 「働いて稼げるなら、年金はいらんだろう」のロジックは、(1)健康で体力が維持されることに加えて、(2)シニアにまだやる気があって、(3)退職後の給与が退職直前と同程度の賃金や身分が保証される、という条件で成立するものです ―― で、これは、今後の社会において、簡単に、「差別」につながりそうです。

 「いい若者が、昼間からブラブラしていやがって」の定番フレーズが、「健康で元気な高齢者が、昼間からブラブラしていやがって」と言われる時代になります。これからの高齢者(老人)は、四六時中働かないと、世間様に顔向けできなくなる、という(嫌な)時代が到来すると思います。

 しかし、高齢者のスキルと、会社のニーズがマッチする可能性は低いです。

定年後の問題

 以前、リカレント教育*)と呼ばれるものが流行っていましたが、最近は、「リスキリング」という言葉に取って代わり、使われています。

 Re-Skilling(再技術取得)とは、技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために、業務上で必要とされる新しい知識やスキルを学ぶことです。

*)関連記事:「リカレント教育【前編】 三角関数不要論と個性の壊し方

 リタイア後も働きたいと考えているシニアは、今の自分が持っている特技/技術をそのまま使って、ラクしてお金を稼ぎたいのです。別にシニアに限らず、リカレントであれリスキリングであれ、誰にとっても、新しいことを学ぶというのは、とても辛く大変なことだからです。

 例えば、私の場合、プログラミングの技術があっても、自分の得意なコンピュータ言語ならすぐに始められると思いますが、別のコンピュータ言語を覚える必要が発生するのであれば ―― たった、それだけのことでも、着手するのに躊躇(ちゅうちょ)してしまいます。

 ぶっちゃけて言えば、仕事の結果を出すのは当然としても、仕事のやり方にまで口を出されたら、3日も待たずに離職してしまう自信があります

 というわけで、リスキリングに失敗した私は、世間から「健康で元気な高齢者が、昼間からブラブラしていやがって」と言われるのが嫌で、『ひきこもり』になることでしょう。

 もしかしたら、私のようなシニアが、連帯すべき相手は、ユース(若者)の世代なのかもしれません。『私の本当の実力を、世間が理解しない。だから私は悪くない、世間が悪い』と言い放ち、シニアとユースが傷を舐め合うコミュニティーの成立です。

シニアとユースが傷を舐め合うコミュニティー

 まあ、これは、最低のコミュニティーですが、それでも、完全に孤立化するよりは、幾分マシだと思いますが。

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