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ArmのIPOが直面する課題RISC-Vの台頭やArm Chinaの存在(2/2 ページ)

Armが米NASDAQ市場へのIPO(新規株式公開)申請を発表した。2023年における最大規模のIPOになるといわれる一方で、今回のIPOは大きな課題に直面していると見るアナリストやソフトバンク関係者も存在する。

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RISC-Vの脅威

Albright Stonebridge GroupのPaul Triolo氏
Albright Stonebridge GroupのPaul Triolo氏

 Armに近しい人物は、「RISC-Vは、Armの長期的な採用の存続にかかわる脅威だ。Armはソフトバンクの下で、ロイヤリティー料やライセンス料を著しく引き上げたため、数多くの企業(既存顧客だけでなく潜在的な新規顧客も)がArm設計から離れ、RISC-Vを採用するようになった。Armは現在のところ、スマートフォンの分野では優位性を維持しているが、ローエンドでRISC-Vへの移行が引き続き加速していけば、モバイル分野でもArmの優位性が脅威にさらされることになるだろう」と述べる。

 RISC-Vは、ロイヤリティーフリーで利用可能なオープンソースライセンスとして提供されているという点で、他の命令セットアーキテクチャ設計とは異なる。

 Patel氏は、「RISC-Vは引き続き、組み込み/IoT(モノのインターネット)アプリケーションや大型SoC(System on Chip)向け制御コアなどの市場においてシェアを拡大していくだろう。RISC-Vは今後、Armが優位性を確立しているクライアント向けアプリケーションの分野に参入していく上で、困難に直面するのではないか」と述べる。

 米中関係の悪化や、現在の輸出規制およびその拡大の可能性を考慮すると、中国におけるArmの将来には問題があるように思われると、Triolo氏は述べる。「中国政府が、海外企業のIPの使用を一定期間にわたり段階的に廃止するよう、中国企業に義務付ける可能性もある。そうなると、中国企業は、RISC-Vを含む代替案を検討せざるを得ないだろう」(同氏)

「Armの未来は明るい」

 Moor Insights & StrategyのチーフアナリストであるPatrick Moorhead氏は、ArmのIPOの見通しは依然として明るいものの、評価額は下がる可能性があると分析した。

 同氏は、「(現在は)どの企業にとってもIPOに最適な時期だとは思わないが、投資家は適切な価格であればArmを受け入れるのではないか」とEE Timesに語った。

 同氏はさらに、ローエンドではRISC-VがArmのシェアを奪う可能性が高いと推測する。一方でMoorhead氏は、これは長期的にはArmにとってプラスであると断言する。「Armは、PCとデータセンターで成長している。Armの未来は明るいと考えている」(同氏)

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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