欧州に進出するTSMCの狙いと、半導体産業への影響:欧州の”半導体ルネサンス”を主導(3/4 ページ)
TSMCは2023年8月、ドイツ・ドレスデンに欧州初の半導体工場を設置する計画を正式に発表した。今回、TSMCへのインタビューなどを通じて、同社の狙いと世界半導体産業への影響を考察した。
欧州の半導体人材開発と技術革新の強化
EMSCのプログラムは、地元の半導体人材開発と技術的ブレークスルーを改善し、欧州の半導体部門の成長と競争力の強化を促すことが期待されている。ESMCの設立は、TSMCの欧州における半導体技術の革新、サステナビリティ、人材開発に対するコミットメントと一致するものだ。
Kao氏は「合弁事業のパートナーと欧州の顧客は、自動車ならびに産業用半導体のリーダーだ。欧州との密接なパートナーシップが、ESMCの強力な専門技術によって実現される革新につながることを期待している」と述べた。
ESMCによって、約2000人のハイテク専門職の直接雇用が創出される見込みだ。TSMCと合弁事業のパートナーは、ドレスデン工科大学などの大学や研究機関と協業し、地元と海外の両方から最高クラスのスペシャリストを取り込む計画だという。
Kao氏によると、半導体関連のスキルや教育を促進するための複数のプロジェクトもTSMCによって計画されているという。例えば、熟練した人材をザクセン州に取り込むことや、台湾とドイツの大学間での交換留学促進、マネジメント教育のためザクセン州へのTSMC社員の赴任、学習インフラへの投資、学校/職業訓練/大学のインフラの改善、そして台湾人の教師の採用などが挙げられる。これらのステップを通じて、ESMC従業員のサポートと欧州の半導体エコシステムの強化を目指す。
持続可能性と環境への対応
TSMCは、ドレスデン工場の建設や運営について、環境に優しい技術を統合することにコミットしている。同社はサステナビリティや環境保護の重要性を重視していて、そのアプローチは明白だ。
Kao氏は「合弁事業のパートナーが建設するのは“グリーン”な工場だ。それに向けて、エネルギー効率に優れた建築や水の再利用などに取り組む計画だ」と述べた。また、新工場ではTSMCの他の海外拠点と同様に、再生可能エネルギーを100%用いることを決定しているという。
さらにTSMCには、ドレスデン工場のカーボンフットプリントと資源消費を最低限にするための具体的な戦略があるとする。サプライヤーに対しても、温室効果ガス排出量や電気使用量の削減を促す計画だ。TSMCとESMCは、2050年までに「ネットゼロ・エミッション(温室効果ガスの排出量を「正味ゼロ」にすること)」の達成に取り組むとしている。
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