インタビュー
欧州に進出するTSMCの狙いと、半導体産業への影響:欧州の”半導体ルネサンス”を主導(4/4 ページ)
TSMCは2023年8月、ドイツ・ドレスデンに欧州初の半導体工場を設置する計画を正式に発表した。今回、TSMCへのインタビューなどを通じて、同社の狙いと世界半導体産業への影響を考察した。
世界の半導体サプライチェーンへの影響と、長期ビジョン
ESMCの設立は、世界的な半導体サプライチェーンに大きく貢献し、また、TSMCの世界的な事業展開のバランスを取るのにも大きな助けとなる。世界的な半導体不足に対処し、さまざまな業界で高まる半導体需要に応えるためにも、重要な役割を果たすだろう。
2020年、EUの半導体市場規模は世界の10%程度(460億米ドル、世界全体では4670億米ドル)だった。自動車分野(100億米ドル)と産業(140億米ドル)はEUの半導体市場にとって重要な分野だ。市場調査会社Omdiaの2021年のデータによると、欧州で生産されるチップは180nm〜40mnノードのものが最大のシェアを占めているが、28nm〜12nmの需要は既に欧州の半導体市場全体の40%を占めているという。
TSMCは今後10年の欧州半導体産業にとって重要な長期的ビジョンを持っている。先進的なCMOS技術に特化した最先端のFinFET対応工場が欧州に設立されることで、欧州のサプライチェーンは大幅に強化されるだろう。これにより欧州では、半導体エコシステムの強化とイノベーションの促進が実現し、最先端技術とソリューションの開発が可能になるはずだ。
【翻訳:滝本麻貴、青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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