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液晶と有機ELが高画質化で競り合うテレビ用ディスプレイ(後編)福田昭のデバイス通信(424) 2022年度版実装技術ロードマップ(48)(1/2 ページ)

前編に続き、テレビ(TV)用ディスプレイの概要を紹介する。今回は、有機ELディスプレイパネル、ローカルディミング用BLU LCDパネル、デュアルセル型LCDパネルを取り上げる。

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ご注意
 今回は前編の続きです。まず前編を読まれることを強く推奨します。


テレビ用OLEDパネルと液晶パネルの技術動向

 前編(前回)では、第2章第6節第3項(2.6.3)「次世代ディスプレイデバイス」の第3目「2.6.3.3 TV向けディスプレイ」の概要を簡単に解説した。「2.6.3.3 TV向けディスプレイ」は、以下の項目によって構成される。「(1)市場動向」「(2)マザーガラス基板とガラスパネル」「(3)ディスプレイ駆動TFTバックプレーン」「(4)OLEDディスプレイパネル」「(5)ローカルディミング用BLU LCDパネル」「(6)デュアルセル型LCDパネル」、である。

 前編では「(1)市場動向」と「(3)ディスプレイ駆動TFTバックプレーン」を説明した。今回(後編)は「(4)OLEDディスプレイパネル」「(5)ローカルディミング用BLU LCDパネル」「(6)デュアルセル型LCDパネル」の概要をご紹介する。

有機EL(OLED)の理想と現実

 ここからは主に、有機EL(OLED)パネル技術を説明しよう。前編でもご説明したように、ハイエンドの高精細テレビ用ディスプレイパネル市場では、有機EL(OLED)パネルと液晶パネルが競合している。両者は映像を投影する原理に基本的な違いがある。有機ELパネルは発光素子である有機ELを利用しているので本質的にコントラスト比が高い(オフにすると画素が漆黒になる)。液晶パネルは、光源であるバックライトの光を液晶のシャッタによって開閉しているので、原理的にはコントラスト比が低い(液晶シャッタは黒表示でもバックライトの光を完全には遮ることができず、光の漏れが生じる)。

 有機EL(OLED)のパネル製造で画素のパターンを形成する方式は大別すると、微細加工済みの金属をマスクとして真空蒸着によってパターンを形成するFMM(Fine Metal Mask)方式と、三原色の発光層をインクジェット印刷によって形成する印刷方式に分かれる。FMM方式は高精細化が容易であるもののスループットが低く、スマートフォンに代表される小型パネルに適するとされる。印刷方式はスループットが高いものの、パネルの解像度が低く、発光層の利用効率がFMM方式に劣る。なお印刷方式はJOLEDの独自技術に近い状態だったため、JOLEDが2023年3月27日に民事再生の手続きを申請したことで、印刷方式の行方には懸念が生じている(参考記事:「JOLEDが民事再生手続き開始、製造/販売から撤退」)。

 FMM方式の欠点を補う工夫として、三原色のパターンではなくパネル全面に三原色の各発光層を積層し、発光層から出てくる白色光を色フィルターで分離する「W(White)OLED」技術が登場した。色フィルターを使うので光の利用効率は下がるものの、製造コストが下がる。LGディスプレイが大型テレビ用パネルにWOLED技術を採用している。

テレビ(TV)向けOLED製造技術とパネルの大きさ、画素ピッチ
テレビ(TV)向けOLED製造技術とパネルの大きさ、画素ピッチ[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)

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