数理モデルから画像領域分割AIを自動で学習:実画像や教師ラベル付けが不要に
産業技術総合研究所(産総研)は、数理モデルから画像領域分割AIを自動学習する技術を開発したと発表した。大量の実画像収集や人手で行っていた教師ラベル付けなど、これまで行っていた膨大な作業が不要となる。
現場の要求に応じて、カスタマイズ可能なパラメータ
産業技術総合研究所(産総研)は2023年9月、数理モデルから画像領域分割AIを自動学習する技術を開発したと発表した。大量の実画像収集や人手で行っていた教師ラベル付けなど、これまで行なっていた膨大な作業が不要となる。
自動運転やロボットなどでは、画像認識AIの導入が進んでいる。画像認識AIに対する要求も、物体を認識する画像識別機能だけでなく、物体の位置情報など詳細内容を把握できる画像領域分割機能を含め、より高度化している。
こうした中で産総研は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が進める委託事業「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業」において、数理モデルから画像や教師ラベルを生成し、AIが基礎的な視覚特徴を自動で獲得する学習済みモデルの構築に取り組んできた。
これまで、数理モデルで生成した学習用画像に、画像を識別した教師ラベルまで自動で生成するところまで成功している。今回は、画素ごとの位置情報を生成できる画像領域分割のタスクを同時に学習できるようにした。これによって、膨大な人的コストを削減し、実画像データも不要となった。
今回実現した数理モデルから生成した画像領域分割のデータセットと、AIが実画像と人が付けた教師ラベルで学習した従来の標準的な画像領域分割の公開データセットを比較した。これにより、従来のデータセットと同様の教師データを生成できることが分かった。
さらに、今回実現した画像領域分割のデータセットは、数理モデルを柔軟に変更できる。このため、現場で必要となるデータの性質に合わせ、学習データにおける「形状」や「テクスチャ」「色」などの情報を、あらかじめパラメータによって変更できる。パラメータをカスタマイズすれば、性能を向上させる事前学習が行えるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- パワーセンサー用テラヘルツ波吸収体、産総研が開発
産業技術総合研究所(産総研)は、6G(第6世代移動通信)などで用いられるテラヘルツ波を99%以上吸収しながら、熱応答性も従来の2倍以上とした「テラヘルツ波吸収体」を開発した。吸収体はパワーセンサーの要素技術となるもので、吸収体の作製には3Dプリンターを用いた。 - 産総研、MLCC内部の誘電層と電極層を薄層化
産業技術総合研究所(産総研)は、誘電層に用いるチタン酸バリウム(BTO)の立方体単結晶(ナノキューブ)単層膜と、電極層として用いる多層グラフェン膜を、交互に積層するプロセス技術を開発した。積層セラミックコンデンサー(MLCC)内部の誘電層と電極層を大幅に薄層化できるという。 - 極低温動作のトランジスタ、ノイズ発生源を特定
産業技術総合研究所(産総研)は、極低温で動作する量子ビット制御用集積回路におけるノイズ発生の起源を特定した。量子コンピュータの高集積化や高性能化につながるものとみられる。 - AIチップ設計拠点が23年4月に本格始動
新エネルギー・産業技術総合開発機構は2023年3月17日、中小/ベンチャー企業などのAIチップ開発を加速するため、2019年から試験運転していた「AIチップ設計拠点」(東京都文京区)を2023年4月1日から本格運用すると発表した。 - LiDARの取得データのみで認識精度98.9%を実現
東芝は2023年9月、LiDARの取得データのみで物体を98.9%の精度で認識し、99.9%の精度で追跡できる技術を開発したと発表した。また、悪天候環境下での検知距離を向上する技術や、計測範囲の柔軟性を向上する技術も開発した。 - Nordic、米AI新興のハードウェアIPを買収へ
Nordic Semiconductor(以下、Nordic)は、米国のAI新興AtlazoのIPポートフォリオを買収する予定だ。Nordicは米国EE Timesの取材に対し、「当社のポートフォリオ全体のデバイスに、ハードウェアAIアクセラレーションIPを追加する計画だ」と述べている。