電極材料の改良で長寿命化、小型高容量密度の全固体電池:伝統工芸とコラボした太陽電池も展示(1/2 ページ)
太陽誘電は「CEATEC 2023」(2023年10月17〜20日/幕張メッセ)に出展し、チップ型の全固体電池を展示した。独自開発の正極材/負極材の改良によって、容量密度は50mAh/cm3超を実現した。
太陽誘電は「CEATEC 2023」(2023年10月17〜20日/幕張メッセ)に出展し、現在開発中である積層チップ型の全固体電池を展示した。2024年以降に一部の顧客へサンプル提供を開始する予定だ。アプリケーションは、IoT(モノのインターネット)機器や小型機器など、消費電力の比較的少ないものを想定している。
同社の全固体電池は、酸化物系の固体電解質を使用。正極にはオリビン型活物質を、負極には独自開発した酸化物系活物質を採用している。積層セラミックコンデンサー(MLCC)で培ったノウハウを生かして積層チップの高密度化を進め、容量密度は50mAh/cm3超を実現している。また、独自開発の正極材/負極材のさらなる改良によって、過去の展示会で展示した同社従来品に比べて、放電容量維持率が向上。材料レベルの実験における100サイクル後の放電容量維持率は、従来品では約50%だったが、今回の展示品では90%強だ。また、セルの大型化にも取り組んでいて、従来品では4〜5mm角だったが、現在は、ラボレベルで1cm角の開発に成功しているという。
担当者は、今後の課題について「現在、100サイクルを基準に実験を行っているが、実用化には数百サイクルに耐えうる必要がある。今後は、100サイクル後の放電容量維持率の向上だけでなく、500サイクルの実験を行った場合の性能評価や改善を行っていく」と語った。
室内光でも発電できる色素増感太陽電池
太陽誘電は、開発中の色素増感太陽電池も展示した。色素増感太陽電池は、室内光などの微弱な光でも発電できる発電素子だ。同社の色素増感太陽電池は、材料/プロセス技術によって高い耐熱性と発電有効面積比率が大幅に向上した。具体的には、ベゼルレスを実現したことで、市販品の発電有効面積比率が66%なのに対し、同社製品は99%となっている。照度200〜1万Luxの光で発電可能で、オフィス内の照度に相当する1000Luxでは31μW/cm2発電できる。電池交換をせずに長期間使用できるため、主に小型のIoT機器での活用が想定されている。
同社は会場で、ガラス製品の製造/販売を行う廣田硝子、金属加工や精密機械部品の加工を行うササゲ工業と共同で制作した、江戸切子の一輪挿しを披露した。一輪挿しの土台の部分に色素増感太陽電池が内蔵されている。昼は通常のガラス製の花瓶として、夜は色素増感太陽電池で発電した電力を使ってLEDを発光させ、間接照明として利用できる。
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