インドの輸入規制が暗示する、中国テック産業の行く末:中国にとってさらなる打撃に(1/2 ページ)
インドは2023年8月、突然、貿易規則を変更し、PCやタブレット端末メーカーに対し、同国内に製品を持ち込む際の輸入許可を取得するよう義務付けた。こうした国産技術の採用拡大に向けた動きは、中国にとってさらなる打撃となるだろう。
『規制の先駆者』であるインド
インド政府は2023年8月に突然、貿易規則を変更し、PCやタブレット端末メーカーに対し、インド国内に製品を持ち込む際の輸入許可を取得するよう義務付けた。
こうした国産技術の採用拡大に向けた動きは、中国にとってさらなる打撃となる。インドは他の大国に先駆けて2年以上前にTikTokを禁止した。その後、欧州連合(EU)より先に、Huaweiに対する5G(第5世代移動通信)規制を強化している。
つまり、インドは『規制の先駆者』であるといえる。これは世界の技術秩序にとって何を意味するのだろうか?
2023年8月のインド商工省による新たな規制の決定は、誰もが不意を突かれただろう。この政策変更についての説明はすぐにはなかったが、国内製造を推進する「Make in India」の取り組みの一環とみられる。
さまざまなニュースソースによると、その後、IT/エレクトロニクス副大臣を務めるRajeev Chandrasekhar氏は、この動きは「信頼性の高いハードウェアとシステムを確保し、輸入への依存を減らすことを目的としている」と述べたという。
新しい輸入規制は、2023年11月1日に発効した。
拡大する技術デカップリング
米国のニュース専門チャンネルであるCNBCが2023年8月に報道したところによると、インドは2022年度、53億米ドル相当のノートPCおよびPCを輸入したが、その90%以上は中国から調達されたという。今回の規制による認可要件によって、これらの電子機器の国際的な輸入は、停止することはないものの減速すると予想される。一方、インド国内の業界は、国内製造を拡大して差分を埋めることについて楽観的な見通しを示している。
このニュースは、アジアの超大国である中国にとっては良いものではない。中国はすでに、地政学、経済、サイバーセキュリティの各分野で激しい戦いを繰り広げている。さらに、マイクロチップを巡る米国との対立も続いている。
米商務省は2023年7月、国家安全保障上の懸念を理由に、中国へのチップおよび関連製造装置の輸出制限を追加した。その結果、収益を中国に大きく依存するIntelとTSMC、Samsung Electronicsの売り上げは減少した。これらの企業は、米国の補助金を巡って競い合っている。
中国は2010年代には世界有数のハイテクメーカーだったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以降、中国からの輸入に対する姿勢は大きく変化した。グローバルサプライチェーンの脆弱性、さらに国家によるスパイ活動やセキュリティ、中国製モジュールに関する懸念によって、テクノロジーの一極集中の危険性が浮き彫りになったからだ。
この問題はパンデミックによって顕在化したが、それ以来、各国政府は技術力を取り戻そうと努力している。インドの新しい輸入許可制度は、その一例にすぎない。
現在、世界各国が独自の政策で自国内生産の促進に取り組んでいる。米国の事例を見ると、2022年に超党派の議員が「CHIPS法(正式名称:CHIPS and Science Act)」を通過させ、国内の半導体製造と研究の強化に500億米ドル以上を割り当てた。その目的は明快で、外国産の半導体への依存を減らすことだ。その結果、半導体メーカーはアリゾナ、テキサス、オハイオ、ニューヨーク各州での新規プロジェクトと工場建設を発表した。
大西洋の反対側では、欧州が2023年4月に独自の半導体法を可決し、430億ユーロ(約460億米ドル)の投資を決定した。欧州は、2030年までに世界の半導体の20%を域内で生産することを目指している。
これらの政策は確かに保護主義的ではないが、目指すところは同じだ。つまり、インドやその他の技術リーダーは、より多くの部品や電子機器を自国内で生産しようとしている。
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