コラム
インドの輸入規制が暗示する、中国テック産業の行く末:中国にとってさらなる打撃に(2/2 ページ)
インドは2023年8月、突然、貿易規則を変更し、PCやタブレット端末メーカーに対し、同国内に製品を持ち込む際の輸入許可を取得するよう義務付けた。こうした国産技術の採用拡大に向けた動きは、中国にとってさらなる打撃となるだろう。
自給自足とセキュリティ強化への移行
輸入の免許制が技術規制政策として主流となるかは、まだ分からない。しかし、世界的な逆風は、より地産地消への明確な方向性を示している。そして、中国からはますます遠ざかる傾向にある。インドの新規制は、こうした点を浮き彫りにしているにすぎない。
さらに、米国のサイバートラストマークやEUのサイバーレジリエンス法など、大西洋の両岸で導入予定の規制は、サイバーセキュリティ強化への意欲をさらに示している。
スパイ活動の懸念だけでなく、リモートワークやスマートホームを支持する政府は、ハッキング可能なIoT(モノのインターネット)製品に悩まされている。中国は10年以上にわたってこの分野で優位に立っていて、西側諸国の政府は法規制によって生産品質とセキュリティレベルを向上させようとしている。その結果、これらの規制は、疑わしい電子機器に罰則を科し、禁止することさえ厭わないものとなっている。
各国が国内生産とデバイスのサイバーセキュリティを優先する中、変化の風が強く吹いている。技術情勢の再構築に向けて、米国からEUまでの各国が同様の戦略を取っている。そして今、インドの先駆的な認可要件は、自給自足とセキュリティの強化への移行を明確に示している。世界のテクノロジー分野は、古い規範に別れを告げ、新しい自立したパラダイムを受け入れているのだ。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「半導体産業のハブ」として半世紀、さらなる地位向上を狙うマレーシア
マレーシアは、半世紀にわたり「半導体産業のハブ」としての地位を築いてきた国だ。そのマレーシアで、工場投資が活発になっている。米中対立が激しくなる中、マレーシアには新たなチャンスが訪れている。 - 米中対立の中、見習うべき点が多い欧州企業の戦略
中国のHuaweiが5G(第5世代移動通信)対応のスマートフォンを発売したことを受け、米国による対中の半導体規制がより強化される可能性が高い。今後、われわれおよび日系各社は、どのようなスタンスで臨むべきなのか、考えてみたいと思う。 - 史上最悪レベルの半導体不況に回復の兆し、生成AIという新たな“けん引役”も
“コロナ特需”から一転、かつてないレベルの不況に突入した半導体業界だが、どうやら回復の兆しが見えてきたようだ。本稿では、半導体市場の統計や、大手メーカーの決算報告を基に、半導体市場の回復時期を探る。さらに、業界の新たなけん引役となりそうな生成AIについても言及する。 - Apple M2 Ultraと「たまごっち ユニ」から見える、米中半導体の位置付け
今回は、Appleのモンスター級プロセッサ「M2 Ultra」と、バンダイの「Tamagotchi Uni(たまごっち ユニ)」を分解。そこから、米中の半導体メーカーが目指す戦略を読み解く。 - スペイン初のチップ工場が誕生か、光半導体企業が計画
スペインの光半導体メーカーKDPOFが、スペインでは初となる商用チップの製造施設を建設する予定だという。本稿の後半では、半導体やハイテク関連の投資を公表している主な国/地域の投資額をまとめている。 - 半導体をめぐる米中対立の「地経学」リスク
東京大学教授兼地経学研究所長の鈴木一人氏は2023年6月22日、半導体サプライチェーンに関するセミナーに登壇し、米国による先端半導体に関する輸出管理などの半導体をめぐる「地経学」リスクを語った。