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電磁波ノイズを高効率で電力に、ソニーが生んだ「業界初」環境発電ICの詳細アンテナ開発のノウハウを活用(1/3 ページ)

テレビや冷蔵庫といった家電や産業用ロボットなどから常時発生する電磁波ノイズを利用し、高効率で電力を生成する環境発電用モジュールを、ソニーセミコンダクタソリューションズが開発した。今回、その技術の詳細を開発担当者に聞いた。

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 テレビや冷蔵庫といった家電や産業用ロボットなど、電気を使用するあらゆる機器から常時発生する電磁波ノイズ。ソニーセミコンダクタソリューションズ(以下、SSS)は2023年9月、このノイズをエネルギー源として活用する、エナジーハーベスティング用モジュールを開発したと発表した。独自のノウハウを生かすことで、IoT(モノのインターネット)センサーなどで必要とされる電力の供給が可能な、高効率の電力生成を実現したという同モジュールの詳細を、開発担当者に聞いた。

あらゆる機器から発生する電磁波ノイズを利用

ソニーセミコンダクタソリューションズが開発した、電磁波ノイズエネルギーから電力を生成するエナジーハーベスティング用のモジュール
ソニーセミコンダクタソリューションズが開発した、電磁波ノイズエネルギーから電力を生成するエナジーハーベスティング用のモジュール[クリックで拡大] 出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ

 光や熱、振動など環境や生体の中に存在する微小なエネルギーを収穫(ハーベスト)し、電力を生成する技術であるエナジーハーベスティング(環境発電)は、あらゆるものがインターネットにつながるIoT社会の実現において重要となる、無線/自立給電によるセンサーネットワーク構築を可能にするものとして期待されている。矢野経済研究所によれば、エナジーハーベスティングデバイスの出荷量は2021年の5億8520万個から、2030年には95億4750万個にまで成長する見込みだという。

 環境発電では光や熱、振動、電波を用いた方式の研究が進んでいるが、今回SSSが開発したのは、家電やPC/モニター、照明、そして産業用ロボットなど、電気を使用するあらゆる機器から常時発生する電磁波ノイズを利用する方式のモジュールだ。

 具体的には、家庭のAC100Vや工場のAC200Vといった交流からDC5Vや12Vなどの直流に変換する際や、インバーター制御などで発生する、数ヘルツから100MHz帯までの電磁波ノイズを利用し、数十マイクロワット〜数十ミリワットの電力を生成。これによって低消費電力の各種センサーや通信機器などへの給電を実現するという。

『厄介者』をエネルギーに、アンテナ開発のノウハウ生かす

 同モジュールを開発したのは、SSSのアナログLSI事業部チューナー製品部だ。同部署はその名の通り、テレビチューナーモジュールや復調LSI、スマートフォンなどに取り付けるケーブルアンテナなどを中心に開発していて、いずれも市場で高いシェアを有している。

 環境発電技術とは一見全く関係のない分野の製品を手掛けてきた部署が、なぜ今回のモジュールを開発することになったのか。同部署の吉野功高氏によると、近年スマホへのテレビ搭載が減少し、ケーブルアンテナ需要が減少したことなどを受け、新たなビジネスを探索していたことがきっかけだったという。

 吉野氏は、これまでの製品開発において「アンテナの感度を高めるとノイズを受けやすくなり、ノイズ劣化が起こってしまう問題がある。このノイズをいかに抑えて性能を出すかという点に注力してきた」と語り、長年、「対策する対象」である電磁波ノイズに関する知見を蓄積してきていたことに言及。そうした中で、「ノイズをうまく活用してエネルギーに変えることができないか、と今回の着想に至った」(吉野氏)といい、2019年に同モジュールの開発に着手したとしている。

アンテナや受信機の開発時に筐体からのノイズや電波妨害に苦労してきた経験から、今回のモジュールの発想に至ったという
アンテナや受信機の開発時に筐体からのノイズや電波妨害に苦労してきた経験から、今回のモジュールの発想に至ったという[クリックで拡大] 出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ

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