物議をかもすFordと中国CATLの協業、米国内から懸念の声:EV用バッテリー工場の建設を再開(2/3 ページ)
Ford Motorは、中国のEV向け電池メーカーのCATLと協業し、米国ミシガン州に電池製造のためのギガファクトリーを建設中だ。ただ、米中ハイテク戦争が続く中、この協業は物議をかもしている。
脆弱な米国EVサプライチェーン
Fordは、自社製電池を生産する計画によって、垂直統合と製造コスト削減を実現することができる。
Russo氏は、「“EVの民主化”を実現するには、サプライチェーンへのアクセスが必要である。これこそが、FordがCATLと成し遂げようとしていることだ」と述べる。
中国のEVメーカーとTeslaは、成熟したEV電池サプライチェーンを確保していて、「Detroit Three(デトロイトスリー)」と呼ばれるFordとGeneral Motors(GM)、Stellantisをはじめ、他の自動車メーカーに対してコスト優位性を確立している。
Leap Manufacturingの共同ディレクターであるThomas Campbell氏は、EE Timesの独占インタビューで、「Teslaは10年ほど前、電池の黎明期に、時代の先端を行っていた」と述べる。Leap Manufacturingは、ハイテク業界における米国の競争力を確保すべく、技術研究開発を加速させていくことを目指している。
また同氏は、「Teslaは、鉱業分野にも投資を行っている。自社に必要な電池を確保するために、サプライチェーンの奥深くまで入り込んでいるのだ」と付け加えた。
「他の自動車メーカーは、電池の調達に苦労しており、中国メーカーとの提携を余儀なくされている」(Campbell氏)
Albright Stonebridge GroupのTriolo氏は、「中国メーカーは、EV用電池サプライチェーンのさまざまな重要分野の中で、競合他社の約10年先を進んでいる。特に、アノード/カソードなどの重要なコンポーネントや、LFPなどの電池向け化合物材料などの分野では、中国メーカーが独占的な地位を占めている」と述べる。
Le氏によると、中国は、世界全体のリチウム採掘権の約45%と、天然に存在する金属の精製能力の約70%を保有しているという。
LFPバッテリーを掲げるFordのTed Miller氏。同氏はFordのbattery cell research and advanced engineeringでマネジャーを務める 出所:Ford
反発の動きも
CATLとの取引に対して、Fordは、米国内から地政学的/環境的な理由による反発を受けている。米国議員たちは、この取引に対する精査を求めている。一部の地域住民からは工場建設に反対する声もあるが、州政府は税制上の優遇措置による支援を提供している。
Triolo氏は、「ミシガン州知事であるGretchen Whitmer氏は、ミシガン州をEV電池サプライチェーンの中心部にしたいと考えている。例えばBYDのように、実際に米国内での工場建設を検討している中国メーカーは、このように歓迎してくれる州を探すだろう」と述べている。
Whitmer氏の報道担当者は、この記事に対するコメントの要請には応じなかった。
Triolo氏は、「CATLのような中国メーカーがメキシコに工場を建設すれば、メキシコが米国市場向けサプライチェーンの拠点になる可能性もある」と続ける。
地政学的な問題とは関係なく、製造業界は人材不足に直面している。Fordは当初、2026年に稼働予定の電池工場の初期生産に、2500人を要するとしていた。「半導体業界の労働力開発とよく似ている。電池を製造するための人材は、どこで確保するのだろうか」(Campbell氏)
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