物議をかもすFordと中国CATLの協業、米国内から懸念の声:EV用バッテリー工場の建設を再開(3/3 ページ)
Ford Motorは、中国のEV向け電池メーカーのCATLと協業し、米国ミシガン州に電池製造のためのギガファクトリーを建設中だ。ただ、米中ハイテク戦争が続く中、この協業は物議をかもしている。
新たな市場を追求するCATL
Russo氏は、「CATLにとって、世界第2位の自動車市場である米国市場に参入することは、世界最大規模の電池メーカーの座を維持するという目的と合致している。自国以外の市場に拡大していかない限り、電池メーカーの成長は停滞するだろう」と述べる。
Russo氏は、「中国はもはや成長市場ではない。現在のところ、6年連続で2500万〜3000万台規模の市場となっている。このため、CATLが引き続き事業を成長させていくためには、グローバル化は非常に重要だ」と述べている。
またTriolo氏は、「米国またはEUのどちらかの市場から締め出されるのは大きな打撃だが、必ずしも世界的なリーダーシップが弱体化するわけではない。中国メーカーは、東南アジアやインドなどの他の大規模市場や、中東のように小規模ながら重要な市場にも目を向けている」と付け加えた。
Russo氏は「CATLはグローバル化によって、独占状態を理由に中国政府によって解体されるリスクを回避することができる。同社の市場シェアは、最も近い競合相手であるLG Energy Solutionの2倍超だ」と述べた。
生産遅延および人員削減に関する報道
Fordは2023年11月21日、マーシャルのギガファクトリーについて、雇用人数と投資額を削減して建設を再開すると発表した。Fordは、全米自動車労働組合(UAW)との契約交渉が難航する中、競争力のある工場運営を行うことができるのかという懸念を理由に、BlueOval工場の建設を一時中断していた。Detroit Free Press紙の報道によると、Fordは建設を再開するものの、雇用人数は当初予定の2500人から1700人に、投資額についても約20億米ドル規模に削減する予定だという。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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