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脅威的な低価格でEVシェアを広げる中国、今後10年は業界のけん引役に停滞気味の米国とは対照的(1/3 ページ)

中国EVメーカーは、他の国々では考えられないような安価でEVを販売することで、今後10年間で、世界のEV業界をリードしていく立場になる見込みだ。米国EE Timesが複数の専門家にインタビューし、市場の展望を聞いた。

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 米国EE Timesがインタビューを行った専門家によると、中国メーカーは今後10年間で、他の国々では考えられないような安価で電気自動車(EV)を販売することによって、世界のEV業界をリードしていく見込みだという。

BYDが「世界最大の自動車メーカーに」

 業界コンサルタント企業Munro&Associatesの創設者で、自動車エンジニアでもあるSandy Munro氏は、「2023年現在までの中国国内のEV販売台数は約800万台で、世界の他の国々で販売されている450万台の約2倍に達する。中国BYD(Build Your Dreams)は、2023年にTeslaを追い抜き、世界最大のEVメーカーとなった」と述べている。

Munro&Associatesの創設者のSandy Munro氏
Munro&Associatesの創設者のSandy Munro氏 出所:Munro&Associates

 「BYDはいずれ、VolkswagenやGeneral Motors(GM)、トヨタ自動車などを超える、世界最大の自動車メーカーになるだろう」(Munro氏)

 西欧諸国が中国によるEVダンピングを訴えている中、世界最大の自動車市場である中国で存続している約40社のスタートアップは、予測される需要急増に対応すべく、生産を加速しているところだ。中国は2009年以来、約140億米ドルのEV関連助成金を投じ、他の国々をリードしてきた。

 Munro氏は、「2028年までには、世界中で販売される自動車全体の約半分がEVになるだろう。スウェーデンやノルウェーは、内燃機関自動車(ICEV)を段階的に廃止し、トレンドの先駆者となっている」と指摘する。

 Albright Stonebridge Groupで技術企業のアドバイザーを務めるPaul Triolo氏は、「中国自動車メーカーは、特にインドのような、EV産業をまだ近いうちには構築できそうにない主要国において、より多くのシェアを獲得していくだろう」と述べる。

 また同氏は、「発展途上国は気候目標を達成する上で、中国メーカーの低価格EVを歓迎するだろう」と付け加えた。

AutomobilityのCEOであるBill Russo氏
AutomobilityのCEOであるBill Russo氏 出所:Automobility

 「中国では、EVの販売価格が世界の他の国々と比べてはるかに低い。BYDが2023年4月に発表したEV『Seagull』は、販売価格が約1万1000米ドルで、Teslaがドイツの工場で生産を予定しているEV『Model 2』の2万6838米ドルの半額以下だ。米国で販売されているEVの一般的な価格は、約5万米ドルだ」(Munro氏)

 BYDは、ノルウェーやデンマーク、英国の他、タイやオーストラリアなどにも販売を拡大している。しかし、米国市場にはまだ参入していない。ロイター通信によると、米中関係の緊迫化や、米国による自国内でのEV製造の推進などが、中国に次ぐ世界第2位の自動車市場である米国への参入を遅らせる要因になっているという。

 現在のところ、EV価格戦争は主に中国国内に限定されていて、BYDとTeslaがトップクラスの競合メーカーとなっている。

 上海を拠点とするコンサルティング企業AutomobilityのCEO(最高経営責任者)であるBill Russo氏は、「Teslaは、いつか約2万5000米ドルのEVを実現したいと語っていた。またVolkswagenも、最終的には2万5000ユーロ(約2万7000米ドル)のEVを実現するという目標を掲げていたが、いずれもまだ成し遂げていない。中国では、その半分以下の価格でEVを購入できる」と述べる。

 BYDとTeslaは本記事に対するEE Timesからのコメント要請には応じなかった。

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