imecも全幅の信頼、Rapidusの「成功の定義」とは何か:湯之上隆のナノフォーカス(68)(3/7 ページ)
imecや経済産業省など、Rapidusの支援を公言する組織/企業は多い。さらに、米TenstorrentやフランスLetiなど、Rapidusとパートナーシップを締結する企業や機関も増えている。それはなぜなのか。2023年11月に開催された「ITF(imec Technology Forum) Japan」で見えてきたその理由と、Rapidusにとっての「成功の定義」をあらためて考えてみたい。
Intelのケース
Intelの社員数と売上高の推移を図2に示す。この図から、Intelが社員数を大きく減らしている時期が2度あることが分かる。1度目では、2000年(8.6万人)から2002年(7.9万人)にかけて約7000人社員を減らした。2001年のITバブル崩壊に対処するためのリストラであり、やむを得ない事態だったと推察する。2度目は、2005年(10万人)から2009年(8万人)にかけて、約2万人の社員を減らした。しかしこれは、1度目の時のような半導体市況の悪化に伴うリストラではない。実際、2008年に起きたリーマン・ショックが半導体不況を引き起こしたのは2009年であるため、2度目のIntelのリストラは、リーマン・ショックに起因したものではない。では、なぜIntelは、2005年から2009年にかけて2万人の社員を減らしたのか。
2万人の社員を減らしたツケ
2005年から2013年にかけて、Intelの5代目CEOを務めたのは、Paul Otellini氏である。Otellini CEOは「効率的な経営」を掲げ、その方針に従って半導体技術者を大幅に削減したと伝えられている。それが、2005年から2万人社員を減らしたことの理由であろう。そして筆者は、2万人の社員(の多くは技術者)を減らしたことが、2016年に14nmから10nmへ微細化を進めることに失敗した原因であると推測している。その詳細は以下の通りである。
Otellini CEOの時代にIntelは、65nm→45nm→32nm→22nmと2年おきに微細化を進めていた。ところが、この間に技術者を大幅に削減したため、次世代の14nm、次々世代の10nmの技術開発に支障をきたしたと考えられる。その兆候として、2013年に立ち上がるはずだった14nmが1年遅れの2014年になってしまった。そして、2016年に10nmが立ち上がらず、その後、5年間、その状態が続いた。第7代目CEOのBob Swan氏は2020年の決算発表で、「Intelはファブレスになるかもしれない」と発言しているほどだ。
ここから分かるのは、最先端の微細化の開発は、一瞬たりとも手を緩めてはならないということである。次世代、次々世代、次々次世代の開発を並行して行いながら、現在の微細化の量産に全力を尽くす。それができなければ、微細化の競争から脱落するしかないのだ。
Intelは2021年に、第8代目CEOとしてPat Gelsinger氏が就任し、Intelの立て直しを図ろうとしている。社員数を2020年の11万人から2万人以上増やして2022年末には13万人を超えた。恐らく技術者は、数万人以上いると思われる。しかしそれでも、一度狂ってしまった微細化の「時計の針」は元には戻らない。その結果、Intelが初めてEUVを使った「intel 4」(TSMCの7nm+相当と推定)は、2年も遅れて、やっと2023年末に出荷されることになったほどだ。
繰り返すが2022年末時点でIntelは13万人以上の社員を擁し、恐らくは数万人の技術者がいる。そしてIntelは2021年から米IBMと技術提携しているし、imecとも連携している。にもかかわらず、7nm+相当の「intel 4」の立ち上げに2年もの歳月を要しているのである。
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