imecも全幅の信頼、Rapidusの「成功の定義」とは何か:湯之上隆のナノフォーカス(68)(6/7 ページ)
imecや経済産業省など、Rapidusの支援を公言する組織/企業は多い。さらに、米TenstorrentやフランスLetiなど、Rapidusとパートナーシップを締結する企業や機関も増えている。それはなぜなのか。2023年11月に開催された「ITF(imec Technology Forum) Japan」で見えてきたその理由と、Rapidusにとっての「成功の定義」をあらためて考えてみたい。
参考資料:世界レベルで成功しているコンソーシアム「imec」
筆者はかつて、つくばにできた日本のコンソーシアム「半導体先端テクノロジーズ(Selete)」に在籍したことがある。しかし、imecはそれとはまるで比べものにならない程、世界レベルで成功したコンソーシアムだ。
本部はベルギー・ルーベンにあり、雑誌“The Economist”(2021年)の評価によれば、「5500億米ドルの半導体産業の中核を担う頭脳集団」だという(図5)。
imecには現在、3つのクリーンルームがあり、その総面積は5500m2で、5500人の研究者が在籍している。その国籍は95ヵ国以上だ。そして、世界の600の組織(企業、スタートアップ、大学)と提携している。そのうち、日本には60組織あるという(図6)。
図6 imecのクリーンルームのCapacity、研究員数、世界の組織との提携[クリックで拡大] 出所:“Imec introduction slides ITF Japan 2023”の資料に筆者加筆
imecのR&Dの方針は、「この指とまれ」方式である。例えば、2nmのロジック半導体のR&Dについて、imecで共同開発したい企業や大学は、imecに研究者を送り込み、R&D資金を提供する。imecの収入の推移をみると、1984年設立以降、まるで世界半導体市場の急拡大のように、右肩上がりに増大している。2022年には8億4600万ユーロ(1ユーロ=161円とすると、約1362億円)の収入があり、その内訳は、企業(69%)、地域からの補助金(24%)、EU プログラム(4%)、政府のファンド(3%)などとなっている(図7)。
imecはオープンなコンソーシアム
このように、imecというコンソーシアムが成功している一因として、オープンであることが挙げられよう。実際、imecには、世界中から、材料メーカー、装置メーカー、ファブレス/ファブライト/EDAメーカー、垂直統合型の半導体メーカー(IDM)/ファウンドリー、そしてシステムのパートナーなどが集結する。このようなネットワークが、imecの強みになっている(図8)。
さらにimecは、世界中の大学、政府、そして企業をつないでいる(図9)。加えて、5つの大学の800人以上のPh.D.および、50人以上のポスドクとコラボレーションしている(図10)。まさに、世界の“頭脳”がimecに集結していると言えよう。
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