imecも全幅の信頼、Rapidusの「成功の定義」とは何か:湯之上隆のナノフォーカス(68)(5/7 ページ)
imecや経済産業省など、Rapidusの支援を公言する組織/企業は多い。さらに、米TenstorrentやフランスLetiなど、Rapidusとパートナーシップを締結する企業や機関も増えている。それはなぜなのか。2023年11月に開催された「ITF(imec Technology Forum) Japan」で見えてきたその理由と、Rapidusにとっての「成功の定義」をあらためて考えてみたい。
Rapidusの成功の定義とは何か
筆者は、新聞、テレビ、雑誌など、さまざまなメディアから、「Rapidusは成功すると思いますか?」というような取材を受ける。しかし、これに答えることは簡単ではない。というのは、Rapidusが成功するかどうかを論じるには、Rapidusがどのような状況になったら成功と言えるのか、つまり、「Rapidusにとって成功とは何か」を定義しなければならないからである。その定義なくして、「成功だ、失敗だ」と言ってもほとんど意味がない。
では、「Rapidusの成功の定義」とは何か?
図4は、東京大学で先端半導体デバイスの研究を行っている高木信一先生がセミナーで示した「ムーアの法則の本質」を表したものである。
1)半導体を微細化すると、高速に動作するなど、チップの付加価値が増大する。それによって、高性能な半導体がより安価で製造できるようになる
2)この半導体によって市場が拡大し、半導体メーカーは膨大な利潤を得ることができる
3)その利潤を次の微細化のための研究開発投資や設備投資に使う。そして、1)に戻って、より微細化した高性能な半導体を安価に製造する
ムーアの法則の本質とは、2年で70%微細化することにより、このサイクルを回し続けることであると高木先生は説明された。筆者は、この説明に膝を打った。そして、このサイクルを回すことができるかどうかが、Rapidusが成功したかどうかを測る物差しになると考える。
Rapidusは2nmから出発することになっている。そのスタートに国の補助金を使うことは、百歩譲って認めるとしよう(本来ならその資金も自前で集めてくるべきだとは思うが)。また、Rapidusが2nmを量産できるかどうかも筆者は困難だと思っているが、ここでは量産できたと仮定する。
問題は、2nmの半導体を量産して、膨大な利潤を得て、次の1.4nmの開発投資や設備投資ができるかどうか、ということである。Rapidusが1.4nmに進む際にも、再び国から巨額の補助金を受け取るのだとしたら、それは成功とは言えない。はっきり言って失敗であるし、微細化を進めるたびに、何度も巨額な補助金を投入するのは止めて頂きたい。
Rapidusの小池社長は、超一流のプレゼンで人々を魅了している。その情熱には脱帽する。しかし、Rapidusの成功とは、「2nmの先端半導体を量産して、市場を拡大し、膨大な利潤を得て、自力で次世代の1.4nmの開発投資と設備投資ができること」と言っておきたい。Rapidus関係者の皆さま、いかがでしょうか?
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