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2024年の半導体市場、本格回復はメモリ次第 〜HBMの需要増で勢力図も変わる?湯之上隆のナノフォーカス(69)(3/5 ページ)

半導体市場の本格的な回復が予想されている2024年。鍵を握るのがメモリだ。本稿では、DRAM/NAND型フラッシュメモリの価格推移と企業別売上高の動向から、半導体市場の回復基調の時期を探る。さらに、そこから読み取れる、メモリメーカーの“栄枯盛衰”を示す。

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DRAMの企業別の四半期売上高

 図5に、DRAMの企業別の四半期売上高を示す。このグラフを見た瞬間に、「あ、これだ!」と謎が解けた気がした。2022年Q3に70.1億米ドルを出荷したSK hynixは、その後急降下して2023年Q1に23.1億米ドルに落ち込むが、同年Q3にかけて約2倍の46.3億米ドルに急上昇している。

図5 DRAMの企業別四半期売上高(〜2023年Q3)
図5 DRAMの企業別四半期売上高(〜2023年Q3)[クリックで拡大] 出所:TrendForceのData Trackのデータを基に筆者作成

 売上高1位のSamsung Electronics(以下、Samsung)も、2022年Q2の111.3億米ドルから2023年Q1の41.7億米ドルに急減し、その後、同年Q3に52.5億米ドルまで持ち直してはいる。しかし、SK hynixの急上昇には及ばない。また、米Micron Technologyは、2023年Q1以降はほぼ横ばいとなっている。

 なぜSK hynixのDRAMの売上高が急回復したか? それは、2022年11月にOpen AIが「ChatGPT」を公開して以降、生成AIが世界中に爆発的に普及していき、それに使われるAI半導体としてNVIDIAのGPUが引っ張りだこになったからである。そして、SK hynixは、GPUに使われるHBM(High Bandwidth Memory)のトップシェアメーカーである。そのHBM効果によって、SK hynixのDRAMの売上高が急増したのだろう。

 DRAMの四半期売上高シェアをみても、SK hynixの大躍進がうかがえる(図6)。2023年Q3のシェアは、1位Samsungが38.9%、2位SK hynixが34.3%で、その差はわずか4.6%しかない。このまま、SK hynixがHBMを武器として売上高を拡大していけば、Samsungを抜くことも不可能ではない気がする。

図6 DRAMの企業別四半期売上高シェア(〜2023年Q3)
図6 DRAMの企業別四半期売上高シェア(〜2023年Q3)[クリックで拡大] 出所:TrendForceのData Trackのデータを基に筆者作成

 ここで、話が逸れるが、HBMの展望について説明したい。

DRAMメーカーの浮沈のカギを握るHBM

 図7に、HBMの規格と、その開発を行っているDRAMメーカーのロードマップを示す。現在、NVIDIAのGPUの「A100」および「A800」に搭載されているのはHBM2eである。

図7 HBMを巡るDRAMメーカーの開発争い
図7 HBMを巡るDRAMメーカーの開発争い[クリックで拡大] 出所:TrendForce、プレスリリース

 その後、SK hynixとSamsungは、2023年Q4にHBM3 の量産を開始する計画である。この両者は2024 年Q1に HBM3e のサンプル出荷、SK hynixはQ2に量産開始、SamsungはQ3に量産開始の予定となっている。

 一方、Micron は HBM3 をスキップし、その次の世代のHBM3e を、2024年Q2に量産を開始し、SK hynixに追い付こうともくろんでいる(世代をスキップするのはMicronらしい戦略である)。

 HBM3eではDDR5のDRAMを8チップ積層し、容量は24Gbとなり、2025年に発売予定のNIVIDIAのGB200に搭載される計画となっている

 ここで、DRAMメーカーがHBMの開発を加速する理由は、その高い価格にある。HBMのビット単価はPC用DRAMの10倍以上といわれており、たとえ歩留りが50%以下であったとしても、DRAMメーカーは十分な利益が出せるという。

 関係筋の話では、HBMの世界の月産キャパシティーは、2023年7月に月産25Kだったが、2024年中旬に月産200K超になると予測されている。その内訳は、SK hynixとSamsungがそれぞれ月産100K、Micronが月産10K程度であるという。

 ただし、HBMの工程は複雑で、恐らくSK hynix以外は、低い歩留りに苦しんでいると思われる。それでも、HBMの高いビット単価を考えると、DRAMメーカーは開発競争から降りることはできない。良品のHBMをどれだけ生産できるかが、今後のDRAMメーカーの浮沈のカギを握っているからだ。

 その中で、2013年からHBMの開発と生産を続けてきたSK hynixには一日の長がある。もし、SK hynixがHBMを独占するようなことがあれば、長らくトップの座を維持し続けてきたSamsungを抜いてしまうかもしれない。要するに、HBM次第では、下克上が起きる可能性がある。

 話を元に戻す。次は、NANDの企業別の四半期売上高を見てみよう。

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