「規模を追うべきか否か」 半導体政策で悩むカナダ:国土は広いが人材は少ない(1/2 ページ)
大規模な半導体工場の投資に沸く米国に対し、隣国のカナダは半導体サプライチェーンの強化策に悩んでいる。広大な国土を持つカナダだが、人口は少なく、工場での人材確保という点では懸念もある。カナダの業界関係者は「カナダは、スモールスケールの利点を生かすべきだ」と主張する。
現在、カナダの半導体業界にとって最も差し迫った問題となっているのは、半導体製造能力を拡大できるかどうかではなく、それにどう取り組むのかという点だ。
専門家たちは米国EE Timesの取材に対し、「カナダは、面積は米国よりも大きいが、つい最近人口が4000万人に達したばかりだ。国境南の隣国である米国が、『CHIPS and Science Act』(CHIPS法)を受けてオンショアリングを拡大していく上での人材確保に苦労しているのであれば、カナダは間違いなく、自国の生産能力をどのように構築すればよいか、また世界半導体サプライチェーンにどれくらい貢献できるのかという点について、現実的になる必要がある」と述べている。
国にとっての成功への鍵が、強みに注力することなのであれば、たった1つの工場に膨大な資金を投じるのは最善の方法ではないのかもしれない。ロイター通信が報じたように、カナダが、EV(電気自動車)用電池工場の建設に150億カナダドル(112億米ドル)の税金を投じる意向を示しているとしてもだ。
C2MIのCEO(最高経営責任者)であるMarie-Josée Turgeon氏は、カナダの半導体製造分野がこのような巨額の政府資金をどのように使うべきかという問題について度々取り上げてきた。同氏は、デジタル技術に不可欠な部品の商用化をサポートする、カナダ最大規模の電子システム開発センターを運営している。
Turgeon氏はEE Timesの独占インタビューの中で、「実際の投資額と同じくらい重要なのが、タイミングだ」と述べる。
「米国が、先端パッケージングなどの分野で大規模投資を発表しているように、今すぐに実行する必要がある。パッケージング分野に参入したいのであれば、すぐに着手し、サプライチェーンに参加できるようにすべきだ」(Turgeon氏)
同氏は、カナダが生産能力を増強していくための基盤を提供する重要な柱として、ケベック州のIBMとTeledyne(Teledyne MEMS)の優れた能力を挙げている。Teledyneは、世界第2位のMEMS専業ファウンドリーだ。
Turgeon氏は、「われわれが次世代技術ノードを実現すべく成長を遂げ、米国の投資とサプライチェーンを補完し続けられるようにするために、こうした強みを継続的に強化していきたい」と述べる。
「大規模」が常に正解ではない
Turgeon氏は、「カナダの半導体業界関係者の多くが、大規模な半導体工場の実現を望んでいる。われわれは、そのような議論を行ってきた」と述べる。
「しかし、それはカナダにとって、短期的に実現できることではないだろう。われわれは現在も、教育やトレーニングに投資を行い、設備の稼働に必要な専門知識を構築しているさなかだからだ。これが、われわれが今準備しなければならないことなのである」(Turgeon氏)
Technum QuebecのCEO(最高経営責任者)であるNormand Bourbonnais氏は、「カナダは、ウォータールー大学などの研究機関の微細加工技術をはじめ、スモールスケールで実行できるという能力を活用すべきだ」と述べている。同氏はEE Timesの独占インタビューの中で、「われわれは、非常に小さい環境の中でモノを構築している。それが、トロントや国内の他の地域で行われている設計作業を補完しているのだ」と語った。材料と機械もカナダの強みだ。地理的な要素も考慮すると、カナダはグローバルな舞台で貢献することが可能な良い位置付けにあるといえる」(同氏)
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