「規模を追うべきか否か」 半導体政策で悩むカナダ:国土は広いが人材は少ない(2/2 ページ)
大規模な半導体工場の投資に沸く米国に対し、隣国のカナダは半導体サプライチェーンの強化策に悩んでいる。広大な国土を持つカナダだが、人口は少なく、工場での人材確保という点では懸念もある。カナダの業界関係者は「カナダは、スモールスケールの利点を生かすべきだ」と主張する。
1つの工場に50億ドルの投資、「阻止しなければ」
CMC MicrosystemsのCEOであるGord Harling氏は、「カナダでも米国のCHIPS法に匹敵するような法律を策定し、1つの半導体工場に50億米ドルを投じることなどが検討されていると聞いた時、それを阻止しなればならないと思った」と述べている。
Harling氏は、「私としては、既存のエコシステムが存在する特定の技術分野で10億米ドル規模の工場を5つ設立し、これらの工場を少量の商業生産と学生のトレーニングの両方に使用する方が、(カナダの)半導体業界にとっては良いと考えている。毎年工場を1つずつ、5年間をかけて完成させるべきだ」と述べる。
Harling氏は、「製造量が多くなりすぎた場合、Teledyneのような企業に製造を委託することもできるが、その時になって初めて、もっと大規模な工場の建設を検討するというのが道理ではないだろうか」と述べる。
「私は、種をまいてその成長を手助けするという考え方が好きだ」(Harling氏)
同氏はその戦略を「Optus」と名付けた。既存のエコシステムを最適化して、顧客の需要に応えるにはどのような設備が必要なのかを検討するための十分な時間を提供するという。
「Optusは、ある工場プロジェクトから学んだ教訓を次に応用するためのプロセスも提供することが可能だ。最も早く着手可能なものを見つけ出し、チームを場所から場所へと移動させることができる。前回のプロジェクトから学ぶのだ」(Harling氏)
同氏は、「このような長期的な思考は、一部の政府関係者たちが望んでいるような迅速な政治的勝利にはならないかもしれないが、カナダにとっては最良のアプローチだ」と強調した。
豊富な天然資源
Infineon Technologies Americasのシニアバイスプレジデントを務めるPreet Sibia氏は、「全てのことを実現しようとするのではなく、カナダの企業が世界半導体サプライチェーンにどのように戦略的に貢献できるかを検討すべきだ」と提案する。
同氏はEE Timesの独占インタビューの中で、「コバルトやグラファイト、リチウム、ニッケル、ヘリウムなど、カナダの天然資源は強みの一つだといえる。素晴らしい原料が大量に存在するのだ。カナダは前進を続けるための方法を見つけなければならない。
近年、NextStar Energy(欧州Stellantisと韓国LG Energy Solutionの合弁会社)がオンタリオ州ウィンザーに建設中の電気自動車(EV)バッテリー工場への投資が注目されている。同時に、EVなど向けのパワー半導体も注目を集めている。Infineon Technologiesは2023年10月、カナダのGaN(窒化ガリウム)パワーデバイスを手掛けるカナダGaN Systemsの買収を完了したと発表した。この買収により、Infineon Technologiesは、オタワを中心に200人以上の優秀なエンジニアを獲得できた。さらにInfineon Technologiesは、同社の推奨設計事務所(Preferred Design House)であるカナダNeutron Controlsと、BMS(バッテリー管理システム)プラットフォームの開発で協業することも発表している。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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