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インタビュー

コロナ禍で「サポートの真空地帯」に ブロードマーケットの声を拾う商社を目指すアフターコロナの調達網を探る(2)(3/4 ページ)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによるサプライチェーンの混乱を経験した半導体/エレクトロニクス業界では、商社とサプライヤー、メーカーの関係性は少しずつ変化している。今回は、コアスタッフの社長である戸澤正紀氏と、アナログ半導体企業のエイブリックで取締役会長を務める石合信正氏が、それぞれ商社とサプライヤーの立場から、コロナ後の調達網について語った。

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最大の課題は「サプライチェーンの確保」

石合氏 もう一つ期待しているのが滞留在庫です。これを、きちっとさばいてもらえること。

 コロナ禍では、スマートフォンやPC、電動工具などの販売が巣ごもり需要で増え、エイブリックのビジネスにもプラスの影響がありました。コロナ禍で一番驚いたのが、自社製品の商流が分かったことだったんです。「え、こんなところにわれわれの製品が搭載されているの、サプライチェーンのこんな先まで行っているの」といった発見があり、本当に新鮮でした。

 その反面、これは供給面でミスできないぞと。サプライチェーンの確保がこれからの最大の課題になることを痛感しましたね。

戸澤氏 コロナ禍では生産ライン停止のニュースを何度も耳にしましたが、あんなことを経験したらもう眠れないですよね。

石合氏 本当にそうです。堅ろうなサプライチェーンを構築するには、サプライチェーン上のリスクになりそうなところを、できるだけつぶしていくしかない。

戸澤氏 コロナ禍を経て、製品の「価格」というものが以前ほど絶対的なプライオリティではなくなってきたのを感じます。それよりも、入手性が重視されるようになってきました。

――サプライチェーンの観点で、コアスタッフはどんな戦略をとる予定ですか。

戸澤氏 われわれも小規模ながら、狙っているのはグローバル市場です。「グローバルニッチ」と言ってもいいかもしれません。グローバルで販売やマーケティングを行えるケーパビリティを持ちたいと考えています。日本は本拠地なので、もちろん今後も注力していきますが、販売拠点の海外展開にも力を入れていきます。

 国内では現在、新しい物流センターを長野県佐久市に建設中です。2024年秋に稼働予定で、在庫収容能力は現在の約10倍になります。国外では、2023年10月にタイ現地法人の倉庫が本格稼働しました。タイ以外にも米国、ドイツ、香港、中国・深センに倉庫を持っています。


2024年7月に完成予定のコアスタッフの新物流センター[クリックで拡大] 出所:コアスタッフ

ブロードマーケットの「ハブ」になる

石合氏 コアスタッフさんの今後の立ち位置としては、どのようになっていくのですか。

戸澤氏 ブロードマーケットにおける「ハブ」になるべきだと考えています。ブロードマーケットに存在する顧客側の中小メーカーが、ニーズを商社に伝えたところで、それがサプライヤーにどの程度伝わるのか、響くのかというと、これはもうほぼ不可能だと思っています。だからこそ、われわれのようなハイブリッドディストリビューターが、ある程度の量(在庫)を一つのハブにまとめ、サプライヤー側に届けることが重要です。われわれが、ブロードマーケットの「顔」となり「声」となって、サプライヤーとの間を取り持つということですね。

 コロナ禍では、「クルマが作れない」といった分かりやすい動向ばかりが注目されてしまい、平時でさえ少ないブロードマーケットに対するサポートが完全に手薄になりました。ブロードマーケットが、“サポートの真空地帯”になってしまったわけです。それもあって、ブロードマーケットの皆さんから、より強くサポートを求められるようになっています。

 ブロードマーケットの“声”の役目を果たすことは、トラディショナルなディストリビューターのように顧客を絞ってビジネスを行うスタイルでは、まずできません。やはりそこは、当社のようなハイブリッドなディストリビューターが担うべきです。

 当社はオンラインのプラットフォームをベースに、販路を多く持っています。その販路をよりグローバルに展開できれば、われわれの顧客は日本だけでなく国外のマーケットにも販路を広げることができます。それだけでリスクをヘッジできるし、思い切った在庫戦略も取りやすくなります。

 この「ハブの機能」をもう少し明確に定義し、当社の顧客や、エイブリックさんのようなサプライヤーに対してアピールしていくことを考えています。

石合氏 日本をベースにしてそれができれば、ユニークな存在になれますよね。

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