NVIDIAもIntelも……チップ開発で進む「シリコン流用の戦略」を読み解く:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(80)(2/4 ページ)
プロセッサでは、半導体製造プロセスの微細化に伴い、開発コストが増大している。そこで半導体メーカー各社が取り入れているのが、「シリコンの流用」だ。同じシリコンの個数や動作周波数を変えることで、ローエンドからハイエンドまでラインアップを増やしているのである。
7機種の「隙間を埋める」SUPERシリーズ
追加されたSUPERシリーズは、若干値下げされ、7機種の隙間を埋める仕様となっている。AI(人工知能)半導体で注目されるNVIDIAの製品だけあって、大きな話題を呼んでいる。テカナリエは基板上のGPU以外のチップ構成にも着目しており、GeForce RTX 40 SUPERシリーズは全て米PNYのものを購入した。
表1はPNYの「PNY GeForce RTX 4070 SUPER/RTX 4070 Ti SUPER/RTX 4080 SUPER」の様子である。3機種が同時に発売されたのではなく、よりハイエンドの機種が1週間おきに販売された。
SUPERシリーズのローエンドであるRTX 4070 SUPERは7168コア、ミドルのRTX 4070 Ti SUPERは8448コア、ハイエンドのRTX 4080 SUPERは10240コアと段階的にコア数が増えている。RTコア、Tensorコア、メモリインタフェースチャンネルも同様にハイエンドほど多い。コア数が増えることによって電力も増え、放熱対策も増えている。ローエンドは2ファン、3ヒートパイプ、ミドルとハイエンドは3ファン、6ヒートパイプとなっている。ミドルとハイエンドの空冷ファンのサイズは異なっており、ハイエンドの方が大きい。
表2はRTX 40 SUPERシリーズの基板上の主要チップと個数を一覧表にまとめたものである。
ローエンドのRTX 4070 SUPERにはNVIDIA AD104-350、2GBのGDDR6Xが6個(トータル12GB)、パワードライブが9個搭載されている。ミドルではAD103-275、GDDR6Xが8個(トータル16GB)パワードライブ11個、ハイエンドではAD103-400、GDDR6Xが8個、パワードライブ13個となっている。性能に応じてGPUがアップ機能のものに置き換わり、メモリ容量が増えるだけでなく、電流を制御するパワードライブチップの個数もスケーラブルに増えている。搭載されるチップはいずれも同じメーカーの同じものとなっている。GPUだけでなく基板上の受動素子などもスケーラブルになっている。
表3はRTX 4070 SUPERに採用されているAD104-350と、2023年1月に発売されてRTX 4070 Tiに採用されているAD104-400のチップ開封結果を比較したものだ。同じシリコンが流用されている。RTX 4070 Tiに搭載されている機能の10%くらいを使用されないものが、RTX 4070 SUPERという仕様になっている。実際のところは不明だが、RTX 4070 Tiで若干不良のあったものを再利用した、という見方さえできるだろう。
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