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半導体業界を変える? SiCウエハーを活用し「グラフェントランジスタ」を製造移動度はシリコンの10倍(1/2 ページ)

米ジョージア工科大学と中国天津大学の研究チームは、グラフェンを用いた機能性半導体の作成に成功したと発表した。SiCの結晶面で成長する単層のグラフェン(エピタキシャルグラフェン)を用いたものだ。

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 米Georgia Institute of Technology(ジョージア工科大学)の研究チームは2024年1月、中国Tianjin University(天津大学)の研究チームとの協業により、強固な結合で知られる単層のカーボン構造であるグラフェンから、「業界初」(同研究チーム)とする機能性半導体を開発したと発表した。

 グラフェンは、同じ厚みの鉄よりも強固で、熱や化学物質にも強い耐性を持つ、優れた導電体である。しかし、グラフェンにこのようなメリットがあるにもるにもかかわらず、研究者たちはこれまで、電気を選択的に伝導/隔離することが可能な機能性グラフェン半導体を実現することができなかった。

グラフェンの構造
グラフェンの構造[クリックで拡大]

 研究者たちが既存の半導体の本質的な特徴とグラフェンの特性を比較したところ、グラフェンは必要とされるエネルギーギャップが不足しているために、オン/オフを正確に行えないということが分かった。ジョージア工科大学の研究チームは、特殊な加熱炉を使用し、SiCウエハー上でグラフェンを完成させるまでに10年間を費やしたという。

 研究チームがNature誌で発表した論文によると、単結晶SiC上の「半導体エピグラフェン(SEG)」は、バンドギャップが0.6eV、室温での移動度は5000cm2/Vsを超え、その移動度はシリコンと比べて10倍超、他の2次元(2D)半導体と比べると20倍超だという。

 研究チームは、「今回われわれが開発したグラフェン半導体は、ナノエレクトロニクスで使用するために必要な全ての機能を備えた、現時点で唯一の2Dプラットフォームである」と述べた。グラフェン半導体は、シリコンに代わる実用可能な半導体の基本要件とされる、標準的なマイクロエレクトロニクスの製造プロセスと互換性を持つ。

“極端な微細化”がもたらした課題

 トランジスタの極端な微細化は、半導体製造における重要な課題となっている。例えば、ゲート絶縁膜の薄膜化で絶縁が不十分になり、リーク電流が増加する。さらに、消費電力量の増加、半導体の過熱などにつながる可能性もある。過熱問題が悪化する原因は、構造の微細化に伴いトランジスタ密度が高まるためだ。原子スケールのトランジスタレベルで量子効果が顕在化し、非決定論的なデバイス動作につながる。

 さらに、高額かつ複雑な製造プロセスも、生産能力に負担をかけている。製造プロセスが複雑化すればするほど、歩留まりは低下する。このような複雑なプロセスの代表例が、EUV(極端紫外線)リソグラフィだ。このため業界は、半導体製造プロセスの新たな手法を見つけ出すことにより、トランジスタを劇的に小型化することのメリットと、それに伴う技術的課題とのバランスを取ろうと努力しているところだ。

 ジョージア工科大学の飛躍的な成果は、エレクトロニクスの新たな手法の到来を告げるものであり、それだけにシリコンと同じく極めて重要な現代エレクトロニクスの礎となるが、速度と小型化の点で限界に直面している。同大学の物理学指導教授であるWalter de Heer氏は、「私はこれまで、過熱を起こしたり機能性を低下させたりすることなく超高電流にも耐え得る、信じられないほどレジリエントな材料であるグラフェンに、大きな期待を寄せてきた」と述べる。同氏は、半導体としての可能性がある炭素系材料に関する初期研究において、2Dグラフェンに焦点を当てた。

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