NVIDIAのGPU不足は今後も続く ボトルネックはHBMとTSMCの中工程か:湯之上隆のナノフォーカス(72)(4/6 ページ)
NVIDIAのGPUが足りていない。需要そのものが大きいこともあるが、とにかく供給が追い付いていない。本稿では、その要因について詳細を分析する。
DRAMにも適用され始めたEUV
話がそれたが、DRAMメーカーは、高集積化と高速化のために、本当に1nm刻みで微細化を進めなければならない。そのため、微細パタンの形成に、EUV(極端紫外線)リソグラフィ技術が適用され始めている(図9)。
最も早くDRAMにEUVを使ったのはSamsungで、1z世代に1層だけ適用した。ただしこれは、Samsungのロジックファウンドリーに向けて、EUV適用の練習のために、巨大なDRAMラインを最大月産1万枚間借りしたにすぎない。従って、Samsungが本当の意味で、DRAMにEUVを使ったのは1αからで、その際、5層にEUVを使っている。
次に、HBMでシェアトップに立っているSK hynixは、1αで1層、EUVを適用した。そしてことし2024年には1βに移行しようとしており、3〜4層にEUVを適用する模様である。そのため、これまで数台しかEUVを持っていなかったSK hynixは、2024年中に10台のEUVを導入するという。なお、Samsungは、ロジックファウンドリーもあるため、30台以上のEUVを保有していると思われる。
最後に、Micronは、どこよりも早くテクノロジーノードを進めるため、なるべくEUVを使わない戦略を取ってきた。実際に、1βまではEUVを使わない。また開発では1γもEUV無しで、ArF液浸+マルチパターニングで行く予定だったようだが、さすがに合わせ余裕がなくなり、歩留り向上が困難なことが分かったため、1γからEUVを導入する見通しである。
これら3社のDRAMメーカーは、現在のところ、レンズの開口数NA=0.33のEUVを使っている(または使おうとしている)が、2027〜28年以降はHigh NAへの切り替えも視野に入れていると思われる。このように、DRAMメーカーの微細化は、どこまでも続くのである。
さて、このような最先端プロセスを使って、どのくらいのHBMが生産されるのだろうか?
DRAM出荷額とHBMの出荷額
図10に、DRAMの出荷額、HBMの出荷額、DRAMの出荷額に占めるHBMの割合を示す。冒頭で述べた通り、2022年11月にChatGPTが公開され、その結果、2023年にNVIDIAのGPUが大ブレークした。
それと歩調を合わせるように、HBMの出荷額も急拡大した。2022年に27.5億米ドル(3.4%)だったHBMの出荷額は、2023年に約2倍の54.5億米ドル(10.7%)となり、2024年には2.5倍以上の140.6億米ドル(19.4%)に急拡大した(カッコ内はDRAM出荷額に占めるHBMの割合を示す)。
ここで、DRAMの出荷額に着目すると、2021年にコロナ特需のピークがあるが、その特需が終焉した2023年には大きく出荷額が落ち込んだ。その後、出荷額は回復していき、2025年には2021年のピークを超えると予測されている。さらに2026年以降は、多少の上下動はあるものの増加を続け、2029年には1500億米ドルを超える見通しとなっている。
一方、HBMの出荷額は、2025年以降も増え続ける予測となっているが、DRAM出荷額に占めるHBMの割合は、2027年以降は24〜25%で飽和している。これはなぜなのだろうか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.