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強誘電体の分極反転挙動をナノスケールで観測従来法に比べ観察時間も大幅短縮(1/2 ページ)

東北大学と東京工業大学の研究グループは、強誘電体の分極反転挙動をナノスケールの空間分解能で、かつ短時間に観測できる顕微鏡手法を開発した。材料特性の改善や新たなデバイスの開発につながるとみられる。

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計測データ解析に機械学習導入、分極反転挙動を示す領域を自動判別

 東北大学電気通信研究所の平永良臣准教授と未来科学技術共同研究センターの長康雄特任教授らによる研究グループは2024年5月1日、東京工業大学物質理工学院材料系の舟窪浩教授らによる研究グループと共同で、強誘電体の分極反転挙動をナノスケールの空間分解能で、かつ短時間に観測できる顕微鏡手法を開発したと発表した。

 強誘電体は、外部から一定の電圧を印加することで分極を反転させることができる。この性質を利用したメモリデバイスが既に実用化されている。ところが、「ペロブスカイト構造」の強誘電体は、デバイスの高集積化などにより膜厚が薄くなると、強誘電性を失うという課題があった。こうした中で、「蛍石型構造」や「ウルツ鉱型構造」といった新タイプの強誘電体では、厚みが10nm以下になっても強誘電性を維持できる材料が発見されている。

 ただ、強誘電体材料はいずれの構造であっても、メモリデバイスにおける書き換え動作など、分極反転動作を繰り返していくと分極疲労が生じ、デバイスの信頼性が低下する。この課題を解決するには、微小領域における分極反転挙動を解明し、材料特性を改善していかなければならない。セルごとの特性ばらつきについても、その要因を明らかにする必要があるという。

 研究グループは今回、「局所C-Vマッピング法」と呼ぶ新たな顕微鏡手法を開発した。走査型非線形誘電率顕微鏡(SNDM)を改良したシステムを用いて計測する。SNDM のセンシング部は、先端がナノスケールサイズのプローブと高感度の静電容量センサーからなる。これにより、非測定物へバイアス電圧を加えた時に生じるわずかな静電容量(あるいは誘電率)の変化を測定できる。非測定物に分極反転電圧を超える振幅の交流バイアス電圧を加えながら静電容量を測定すれば、バタフライ曲線と呼ばれる特徴的な「静電容量−電圧(C-V)曲線」が得られる。

 測定したC-V曲線のピーク位置やピーク面積などを解析すれば、分極反転挙動に関する情報が抽出できる。ピエゾアクチュエーターを用いてプローブを移動させれば、二次元画像的なデータ(厳密にはハイパースペクトルイメージデータと呼ばれる膨大な情報量を含むデータセット)が得られる。これにより、分極反転電圧の面内のばらつきを直接観察でき、結晶欠陥など分極反転を阻害する要因が、「どの場所に」「どの程度」偏在しているかを捉えることが可能となった。

左は局所C-Vマッピング法の装置図。右は局所C-V曲線の測定例(タンタル酸リチウム単結晶)
左は局所C-Vマッピング法の装置図。右は局所C-V曲線の測定例(タンタル酸リチウム単結晶)[クリックで拡大] 出所:東北大学他

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