生成AIにけん引される半導体業界、現在の勝者と今後の展望:電子機器設計/組み込み開発メルマガ 編集後記
生成AIブームにけん引され、データセンター向けGPUおよびAI ASIC市場は2029年に2330億米ドル規模にまで成長することが予測されています。
この記事は、2024年5月13日発行の「電子機器設計/組み込み開発 メールマガジン」に掲載されたEE Times Japan/EDN Japanの編集担当者による編集後記の転載です。
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生成AIにけん引される半導体業界、現在の勝者と今後の展望
生成AI(人工知能)を中心としたAI活用はさまざまな業界で拡大を続けています。筆者は先日、ドイツ・ハノーバーで開催された世界最大級の産業展示会「HANNOVER MESSE」やニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world」の取材に行ってきましたが、そこでもデータシートなどの解析やコードの自動生成、製品設計支援、製造現場作業者のサポートなどなど、生成AIを活用したソリューションが数多く提示されていました。
それでは生成AIは半導体市場にどれほどの影響を与え、今後はどのような展開が予想されるのでしょうか。
フランスの市場調査会社Yole Groupは2024年4月、「Exploring the impact of Generative AI: identifying the winners.(和訳)生成AIのインパクト調査:勝者を特定する」と題したプレスリリースを発表。この中で、市場予測や『勝ち組』となっているメーカーおよび、今後の展望などを示しています。
「主役」のNVIDIAは攻勢をさらに強める
みなさんご存じの通り、生成AIによって急拡大している半導体需要の中心となるのは、AIアクセラレーション用のデータセンター向けGPUであり、この需要によって躍進を遂げているのがNVIDIAです。2023年、IntelやSamsung Electronics(以下、Samsung)ら主要半導体メーカーが軒並み売り上げを減らす中、NVIDIAは2023年通期売上高が前年比2.3倍の609億2200万米ドル、純利益は同6.8倍の297億6000万米ドルと急成長を遂げ、市場のトップランカー(ファウンドリー除く)に躍り出ました。企業の売上高は全てが半導体で占められている訳ではありませんが、これまでに各市場調査会社が発表してきた市場調査を見ても、NVIDIAが大きな成長を遂げ、これまで首位争いを繰り広げてきたIntelやSamsungの2社に大きく迫る成長を遂げたことは明らかです。
フラグシップGPU「H100 Tensor コア GPU(以下、H100)」を中核に躍進を続けてきたNVIDIAは、2023年11月にはH100と同じHopperアーキテクチャベースで広帯域幅メモリ(High Bandwidth Memory:HBM)の最新世代であるHBM3E搭載となった改良版GPU「H200 Tensorコア GPU(以下、H200)」を(2024年3月に出荷開始)、2024年3月18日には新GPUアーキテクチャ「Blackwell」ベースの新GPU「 NVIDIA B100 Tensor コア GPU(以下、B100)」や「NVIDIA B200 Tensor コア GPU(以下、B200)」を相次いで発表(2024年後半に発売予定)するなど、攻勢をさらに強めています。台湾の市場調査会社TrendForceによれば、2つのB200とGrace CPUをNVLinkで結合した「GB200 Grace Blackwell Superchip(以下、GB200)」の出荷台数は2025年までに数百万基を超え、NVIDIAのハイエンドGPU売り上げ規模の40〜50%近くを占める可能性があるといいます。
カスタムAI ASICが「NVIDIAの主要な競争相手」に
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