検索
ニュース

東北大学が研究者/特許情報を公開――「サイエンスパーク構想」の狙いとは産学連携の促進に向け(2/3 ページ)

東北大学と三井不動産は2024年4月26日、「東北大学サイエンスパーク構想」に関する合同説明会を実施した。両者は、「共創の場」の構築とコミュニティーの形成を中心とした産学連携により、社会課題解決と新産業創造を目指す。

Share
Tweet
LINE
Hatena

「MICHINOOK コミュニティ」で産学連携を加速

 東北大学と三井不動産は記者説明会で、サイエンスパーク構想の愛称を「MICHINOOK(ミチノーク)」とし、新設する会員組織の名称を「MICHINOOK コミュニティ」に決定したと発表した。三井不動産は、不動産事業で培ったコミュニティー形成/運営に関するノウハウを生かし、MICHINOOK コミュニティの形成/運営を支援する。

 MICHINOOK コミュニティでは、学術領域ごとのコミュニティーを拡大しつつ、業界や領域の垣根を超えた交流/連携を加速させる。具体的な活動としては、東北大学に属する数百人の研究者情報や東北大学附属図書館の蔵書の内容、同学が保有する特許情報を公開する他、セミナー/シンポジウムの開催や、会員同士の交流機会の創出などを行う。まずは、東北大学が強みを持つ「半導体・量子」「グリーン・宇宙」「ライフサイエンス」「材料科学」の4つの学術領域を対象とし、順次拡大していくという。

対象となる学術領域の4分野「半導体・量子」「グリーン・宇宙」「ライフサイエンス」「材料科学」
対象となる4つの学術領域「半導体・量子」「グリーン・宇宙」「ライフサイエンス」「材料科学」[クリックで拡大] 出所:三井不動産

 三井不動産 イノベーション推進本部 産学連携推進部長の湯川俊一氏は、産学連携における企業側の課題について「企業は、産学連携の入り口探し(大学側との接点作り)に苦労する場合が多い。仮に入り口を見つけた場合でも、大学に在籍する多くの研究者の中から、産学連携における最適な研究者を見つけることが難しい。また、産学連携に取り組む他の企業との交流機会の創出にも難航している」と説明。MICHINOOK コミュニティについて「産学連携の入り口の役割を担い、研究者や企業を見つけて、つながれる組織を目指す」と語った。

 MICHINOOKコミュニティの会員には、個人会員(無償)と法人会員(有償)の大きく2種類がある。個人会員は、東北大学の情報を一部閲覧できる他、一部の交流イベントに参加できる。法人会員は、東北大学の情報閲覧、交流イベントへの参加の他、東北大学キャンパス内の会議室/コミュニティースペースの利用や、他会員に向けて自社情報の発信ができる。

 個人会員の会員登録は2024年4月26日から開始していて、法人会員については同年8月の開始を予定している。会員獲得の目標について、三井不動産は「個人会員は5年後に5000人、法人会員は5年後に100社を目指す」とコメントした。なお、法人会員の年会費については「未定」としつつ、「三井不動産が産学官連携を目的として2016年に設立した『LINK-J』と同等(年間50万円)程度の会費を想定している」と述べた。

会員種別と会員募集スケジュール
会員種別と会員募集スケジュール[クリックで拡大] 出所:三井不動産

 三井不動産 社長の植田俊氏は、東北大学の魅力について「社会実装を見据えた研究をしている点だ。東北大学が開発した世界最強クラスの永久磁石『KS鋼』やフラッシュメモリなどはその成果の最たる例だ。その他、学内連携や若手研究者の育成に力を入れている」と述べ、サイエンスパーク構想について「産学連携による社会課題解決と新産業創造を目指す象徴的な取り組みになる」と語った。

 冨永氏は、三井不動産と連携を決めた理由について「サイエンスパーク構想を支援してくれるパートナー企業を募集したところ、一番具体的な提案をしてくれたのが三井不動産だった。東北大学と三井不動産はLINK-Jから関わりがあり、本学のことを深く理解してくれていたことも決定理由の1つだ」と説明した。パートナーシップの契約期間(第1期)は、2023年11月1日から2025年3月末日までの1年5カ月。2028年度末までの5年5カ月(第5期まで)を視野に入れ、年単位で更新を検討するという。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る