SamsungとTSMCの巨額投資、米国サプライチェーンへの影響は:再び「世界のリーダー」に(1/2 ページ)
Samsung Electronics(Samsung)とTSMCは2024年、相次いで米国での半導体製造への巨額投資を発表した。目的としては、現在アジアに偏っている最先端半導体の生産を分散させることや、米国のサプライチェーンにおける半導体の供給源を確保すること、米国の技術的独立を強化することなどが挙げられる。この投資は米国技術に大きな変化をもたらすとみられる。
Samsung Electronics(以下、Samsung)とTSMCは2024年、相次いで米国での半導体製造への巨額投資を発表した。目的としては、現在アジアに偏っている最先端半導体の生産を分散させることや、米国のサプライチェーンにおける半導体の供給源を確保すること、米国の技術的独立を強化することなどが挙げられる。この投資は米国技術に大きな変化をもたらすとみられる。
「海外移転で安価に」 失速した米国企業
米国の半導体製造業界は、過去数十年間にわたって減速し続けてきた。世界の半導体生産量全体に占める米国のシェアは、1990年代には30%を超えていたが、2020年には約12%まで減少し、国内半導体製造の脆弱性への懸念が高まっている。
Intelの前CEO(最高経営責任者)である故Andy Grove氏は2010年、Businessweek紙に寄稿した記事の中で、「米国企業は、製造やエンジニアリングさえも、海外でもっと安価に行えるということを発見した。それを実行すると利益が改善し、経営側も株主側も満足した。継続的な成長を遂げ、利益もさらに増加したが、企業は次第に失速し始めた」と述べている。
米商務省長官のGina Raimondo氏は、「半導体サプライチェーンの多くはアジアの数カ所に集中していて、米国サプライチェーンは非常に脆弱になってしまった」としている。
超党派による「CHIPS and Science Act」(CHIPS法)は、半導体メーカーを米国に呼び戻してこうした傾向を逆転させるべく、数十億米ドル規模の助成金や奨励金を提供する。
Samsungは今後20年間でテキサスに2000億ドルを投資か
Samsungは、米国テキサス州テイラーの新工場建設に400億米ドルを投じると表明していて、このうち64億米ドルは、米国政府がCHIPS法に基づき資金提供するという。このため同社は、米国のサプライチェーン強化の取り組みの中心として位置付けられている。注目すべきは、Samsungは同工場で2026年までに最先端の2nmチップの製造を開始する予定で、米国アリゾナ州でのTSMCの2nmチップ生産予定よりも2年早いという点だ。これによりSamsungはグローバル市場における地位を強化し、米国は自国内における最先端技術の生産能力を大幅に加速させることになる。
Samsung SemiconductorのCEOであるKye Hyun Kyung氏は、「われわれはただ単に製造工場を拡充させているのではなく、現地の半導体エコシステムを強化し、米国を世界の半導体製造の目標として位置付けているのだ。AI(人工知能)チップのような将来の製品に向けた米国企業からの需要急増に対応すべく、われわれの工場は最先端プロセス技術を備え、米国半導体サプライチェーンの安全性を実現するためのサポートを提供する」と述べている。
Samsungは、2022年にテキサス州会計検査院に提出した文書の中で、今後20年間でテキサス州において新たに11件の半導体工場を建設し、2000億米ドル以上を投じる可能性があると示している。
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