SamsungとTSMCの巨額投資、米国サプライチェーンへの影響は:再び「世界のリーダー」に(2/2 ページ)
Samsung Electronics(Samsung)とTSMCは2024年、相次いで米国での半導体製造への巨額投資を発表した。目的としては、現在アジアに偏っている最先端半導体の生産を分散させることや、米国のサプライチェーンにおける半導体の供給源を確保すること、米国の技術的独立を強化することなどが挙げられる。この投資は米国技術に大きな変化をもたらすとみられる。
アリゾナで事業拡大を続けるTSMC 「全力を尽くす」
TSMCも、米国アリゾナ州の一連の半導体工場建設に650億米ドルを投じ、米国における存在感を強めている。米中間の貿易摩擦や、2024年4月に発生した台湾の地震などにより、アジアにおける半導体生産が混乱する懸念が高まっている。対してアリゾナ州は地震発生のリスクが低く、より安定した環境だ。TSMCは、米国政府から最大66億米ドルの資金提供を受けて事業範囲を拡大し、さらなる高性能化を実現していくという。
米国バイデン大統領は、「TSMCはアリゾナ州フェニックスに第3工場を建設する予定だ。これによって同州への総投資額は650億米ドルに達し、建設/製造関連で2万5000人超の直接雇用と、数千人規模の間接雇用が創出される。これらの工場は世界最先端の半導体を製造し、2030年までには世界半導体生産量全体の20%を占めるようになるだろう」と述べている。
TSMCのCEOであるC.C. Wei氏は、「半導体設計からハードウェアシステム、ソフトウェア、アルゴリズム、大規模言語モデル(LLM)までいずれの領域でも、モバイルやAI、HPC(高性能コンピューティング)などのパイオニア企業をTSMCがサポートできることを光栄に思う。これらの顧客企業は、TSMCが提供する最先端半導体の需要をけん引するイノベーターだ。われわれはそのファウンドリパートナーとしてアリゾナ工場での生産能力を増強することで、イノベーションの実現をサポートしていく。われわれは、アリゾナ工場のこれまでの進展に胸躍らせていて、その長期的な成功に向けて全力を尽くしている」と述べる。
NVIDIAの創設者でありCEOを務めるJensen Huang氏は、「TSMCは、われわれがGPUとアクセラレーテッドコンピューティングを開発して以来の、長年にわたるパートナーだ。当社が現在AI分野で進めているイノベーションは、TSMCなしには実現し得なかっただろう。TSMCがアリゾナに最先端工場を建設することで、引き続きパートナーシップを維持していけるということにとても興奮している」と述べている。
米国商務省長官のGina Raimondo氏は、「米国は、TSMCやSamsungのプロジェクトにより、2030年までに世界全体の最先端半導体チップの約20%を製造できるようになるだろう。世界最先端のチップを米国内で全く製造していないことは、国家安全保障上の問題である。われわれは今、米国が半導体設計だけでなく製造や先進パッケージング、研究開発などの分野でも再び世界リーダーになれるよう、投資を行っているのだ」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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