SK Hynixは新工場に146億ドルを投資へ HBM市場のゆくえは:AI需要で成長(1/2 ページ)
AI(人工知能)半導体の性能を加速させるHBM(広帯域幅メモリ)で業界をリードするSK hynixは、韓国の新工場「M15X」に20兆ウォン(約146億米ドル)以上を投じる予定だという。本稿では、HBM市場の現況とメモリメーカー各社の動向について述べる。
AI(人工知能)半導体の性能を加速させるHBM(広帯域幅メモリ)で業界をリードするSK hynixは、韓国の新工場「M15X」に20兆ウォン(約146億米ドル)以上を投じる予定だという。
同社は、2024年4月24日に発表した報道向け資料の中で、「急増する需要に対応し、市場リーダシップを強化すべく、2025年11月までのM15X完成を目指す」とした。同工場は韓国・清州市に建設予定で、次世代DRAM/HBMの生産能力を拡大していく予定だ。
SK hynixのCEO(最高経営責任者)であるKwak Noh-Jung氏は発表資料の中で、「M15Xは、AIメモリを世界に供給する重要な施設になり、当社の現在と未来をつなぐ足掛かりとして極めて重要な役割を担うだろう。今回の投資が民間部門の枠を超えて、幅広い国内経済の未来に貢献するための大きな飛躍になると確信している」と述べる。
同社はメモリ市場の成長について、「AI時代の到来により、メモリ市場は中長期的な成長段階に入った。HBM市場は年間成長率60%以上で成長し、汎用DRAMの需要もサーバ向け大容量DDR5モジュール製品によってけん引され、着実に増加していく見込みだ」としている。
HBM市場で一人勝ち状態のSK hynix 需要も好調
SemiAnalysisのチーフアナリストであるDylan Patel氏は米国EE Timesの取材に応じ、「SK hynixは、HBM市場のリーダー的存在であり、HBM3では85%以上、HBM全体では70%以上のシェアを獲得している」と述べる。同氏によるとSK hynixは、特にHBM3E/HBM4の市場シェアを維持するために投資を行っているという。
同氏は、競合メモリメーカーであるMicron Technology(以下、Micron)とSamsung Electronics(以下、Samsung)について「現在のところ、性能や電力効率の面ではSK hynixには及ばない。SamsungはHBMの生産キャパシティーには余裕があるが、最速のHBM3を製造することができない」と指摘する。
Objective AnalysisのゼネラルディレクターであるJim Handy氏によると、高性能HBMの需要が短期的に低迷していく兆候はほとんどみられないという。同氏は米国EE Timesの取材に対し、「AIはみんなの新しいおもちゃのようなもので、大規模言語モデル(LLM)への興味もやがて消えていくかもしれない。しかしそうなったとしても、現在標準的なサーバが担っている道案内や言語翻訳、ターゲット広告、基本的な検索などのAIタスクの効率を向上させるためのAIプロセッサ利用には関心が高まる一方だ」と述べている。
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