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米国の「意固地な」半導体規制は中国の自立を助長するだけHuawei向けの輸出許可を取り消し(1/3 ページ)

米バイデン政権は、Huaweiに対する半導体の輸出許可を取り消す決断を下した。これに対し中国は強く反発。米中の分断はさらに深まると予測される。

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 米バイデン政権は2024年5月、Huaweiに対する半導体の輸出販売ライセンスを取り消す決断を下した。これにより、現在米国と中国の間で繰り広げられている技術戦争はさらに激化するとみられている。この動きはHuawei製のノートPCとスマートフォンに使用される半導体を対象にしたもので、Huaweiのサプライチェーンを混乱させている一方、中国の技術面の野望に関する懸念を再燃させている。

 2019年から米国による貿易制限下にあるHuaweiは、IntelやQualcommといった米半導体メーカーから輸入する半導体に依存している。

 ライセンスの取り消しによって、Huaweiのサプライチェーンは事実上断ち切られており、同社の新型ノートPCやスマートフォンの生産能力も妨げられる可能性がある。こうした動きが取られる前、Huaweiは相対的に復活の時期にあった。国内生産された高性能半導体を搭載した「Mate 60 Pro」の発売などによって、2024年初めのスマートフォン販売は前年比で64%も増加していたのだ。

写真:Pablo Valerio
写真:Pablo Valerio

 新たな制裁について、その影響を全て評価するにはもう少し時間がかかるだろうが、既存のサプライチェーンの課題を悪化させ、Huaweiの主要市場での競争力が制限される可能性がある。

 米民主党下院議員であるElise Stefanik氏は、声明の中で「今回の動きによって米国の国防は強化され、創意工夫は守られ、中国共産党の技術発展力を弱めることができるだろう」と述べた

中国は強く反発

 米国商務省の動きは、中国の技術面の台頭とHuaweiが課す潜在的な国防リスクに関する幅広い懸念を反映している。だが、中国政府はこの動きについて「economic bullying(経済的ないじめ)」と見ており、グローバルなサプライチェーンを混乱させると主張している。このように緊張が高まることで、二国間の関係はさらに緊張し、報復行動につながったり、グローバルな技術業界に影響をもたらしたりする可能性もある。

 中国外務省は「中国は、米国が『国防』の概念を引き伸ばし、輸出規制を乱用して中国企業を正当な理由なく抑圧していることに対し、断固として抗議する」とコメントした

 Huaweiはしばらく前からこのシナリオに向けて準備してきた。例えば、同社の傘下で半導体設計部門であるHiSiliconは、独自の半導体技術の開発を着実に進めてきた。

 米国からの圧力によって、中国の半導体に関する自立性はさらに押し上げられ、SMICやMediaTekといった国内プレイヤーの力を助長する可能性もある。SMICとMediaTekは、Armアーキテクチャをベースとするスマートフォンやタブレット向けプロセッサを供給することができる。

 米国による制裁にかかわらず、Huaweiが2023年にSMIC製半導体を装備したスマートフォンの発売に成功したことは、中国の半導体製造能力の高まりを示している。一方でSMICは、2023年の売上高と粗利益がいずれも大幅に下落したと報告した。

 HiSiliconは強力な半導体を設計しているが、製造を請け負うファウンドリーを依然として必要としている。一方、中国の主要ファウンドリーであるSMICは、高度な半導体製造能力という点では、TSMCのような業界リーダーと肩を並べているとは現時点ではいえない。

 Huaweiは、Intel製チップの置き換えにおいて、複雑な課題に直面している。AMDのチップまで今回のような規制の網にかかれば、その課題は一層深刻なものになる。Intelは、高性能なx86プロセッサ技術で明らかに優位に立っている。そのため、HiSiliconは特にハイエンドゲームや専門的なワークステーションといった要求の高いタスクに関しては、Intelの性能をすぐに再現することは難しいだろう。

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