米国の「意固地な」半導体規制は中国の自立を助長するだけ:Huawei向けの輸出許可を取り消し(2/3 ページ)
米バイデン政権は、Huaweiに対する半導体の輸出許可を取り消す決断を下した。これに対し中国は強く反発。米中の分断はさらに深まると予測される。
苦悩する米半導体メーカー
輸出規制はIntelとQualcommにも課題をもたらした。特に最近のIntelの苦境を踏まえると、Huaweiの事業を失えば、最終的な収益に影響する可能性がある。さらに言えば、今回の動きによって他の中国企業も遠ざけられ、将来のビジネスチャンスに影響する可能性もある。
Intelは引き続き、在庫管理で課題に直面しているとみられる。同社の直近の四半期決算報告によると、Intelの在庫は現在、2023年末から3.3増の114億9400万米ドルとなっており、総資産の6%を占めている。
米国商務省がIntelに通告した直後、同社はForm 8-KのレギュレーションFD(Fair Disclosure)を公開した。
「2024年5月7日、米国商務省はIntelに対し、中国の顧客に対してコンシューマー関連の製品を輸出するための特定のライセンスを即時有効で取り消したことを通告した。それを受けて、Intelは2024年第2四半期の売上高予測を従来の125億〜135億米ドルで維持するものの、中間点を下回ると見込んでいる。2024年通年の売上高ならびに1株当たりの収益については、2023年比で増加するという予測を維持する」
同様にQualcommも声明を米国証券取引委員会(SEC)に提出した。
「2024年5月7日、米国商務省はQualcommに対し、4G(第4世代移動通信)ならびに他の特定のIC製品(Wi-Fi製品を含む)をHuaweiおよびその関連会社や子会社へ輸出するための当社のライセンスを即時有効で取り消したことを通告した。2024年5月1日付で当社が提出した「Form 10-Q」で開示した通り、当社は今暦年を超えてHuaweiから製品収益を受けることは見込んでいなかった。当社では、今回のライセンス取り消しに即座に従うための対策を実行したため、前述の日付を2024年5月7日に変更した。この取り消しにかかわらず、2024年5月1日付の収益関連リリースの中で提供した2024年度第3四半期の財務ガイダンスを変更することはない」
Huawei関連の事業を失ったことにより、Intelの半導体在庫は過剰状態になり、価格調整または値下げにつながる可能性がある。さらに、技術戦争を巡る不確実性が広がったことが、他の中国企業からの将来的な需要にも影響し、Intelの在庫管理戦略を一層困難にすることもあり得る。
今回の輸出規制は、主にHuaweiのノートPCとスマートフォン向け半導体をターゲットにしたものであるため、IntelとQualcommにより直接的な影響をもたらしている。NVIDIAのGPUもグラフィック処理とAI(人工知能)アプリケーションに使われているので、すぐにではないものの混乱に直面する可能性がある。いずれにせよ、より広範な地政学的緊張が今後の規制を引き起こす可能性もある。また、そうした緊張が広がるのに伴い、NVIDIAが中国への半導体販売に関してより慎重なアプローチを取るようになることもあり得る。
AMDにとって、状況はより不安定だ。同様の輸出規制が同社に課せられた場合、Huaweiは主要サプライヤーをもう一つ失うことになる。両社の中国における現在の在庫レベルに不確実性を生み出し、状況がどのように展開するかによっては、生産量や販売予測の調整につながる可能性もある。
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