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量子ビット制御超伝導回路を提案、原理実証に成功:大規模量子コンピュータ向け(2/2 ページ)
産業技術総合研究所(産総研)は、横浜国立大学や東北大学、NECと共同で、大規模量子コンピュータに向けた量子ビット制御超伝導回路を提案し、原理実証に成功した。1本のマイクロ波ケーブルで1000個以上の量子ビットを制御することが可能となる。
試作チップでの動作検証
シミュレーションにより、4.5GHzと5GHzのマイクロ波を多重化した場合の出力を検証した。この結果、「超伝導ミキサー1」と「超伝導ミキサー2」から、「4.5GHzのマイクロ波1」と「5GHzのマイクロ波2」がそれぞれ出力されることを確認した。各マイクロ波は各制御信号で個別にオン/オフ制御できる。このため、任意の量子ビットにマイクロ波を照射できるという。しかも、回路の消費電力は1量子ビット当たりわずか81.8pWであることも分かった。
研究グループは、産総研の超伝導集積回路プロセスを活用し、提案した量子ビット制御超伝導回路を作製。試作したチップを用いて、量子ビット制御に必要となる基本的なマイクロ波操作を検証した。そして、多重化された2つのマイクロ波が分離され、それぞれを個別にオン/オフ制御できることを確認した。
今回の研究は、産総研量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センターの竹内尚輝主任研究員が、横浜国立大学の吉川信行教授、山栄大樹特任教員(助教)(研究当時)、東北大学の山下太郎教授、NECの山本剛主席研究員と共同で行った。
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